欧州議会及び評議会による著作権法に関するEU指令2012/28/UEの発行に伴い、同指令のスペイン国内法への置き換えが行われた(法第21/2014号)。これによりスペインの著作権法(LPI)第37条bisが改定され、先日発行された勅令第224/2016号が施行されている。本改正によって、パブリック・ドメインとは未だみなされない著作物や、その著作者が不明もしくは所在がわからない等権利の所在が不明な著作物に関する法整備が実施された。このような著作は孤児著作物とも呼称されている。
上述の法整備に伴い、当該法の規定不足が解消されることから、これまで日の目を見ることのなかった著作物の公開が促進されることが期待される。図書館、学校、資料館、博物館、美術館、視聴覚資料の保管所、といった文化的団体や公共放送機関で眠っていた著作物が法に抵触することなく公開可能となるからだ。
今回のEU指令のスペイン法への置き換えに際し、孤児著作物の定義、同法の目的及び適用範囲、孤児著作物として共通認識されるための要件、また法的な権利者が所有権を請求した場合に孤児著作物としての性質を失わせることができる旨が規定された。併せて孤児著作物の使用許諾方法や、受益団体(図書館、美術館等)が保有する作品を孤児著作物とみなす前に権利者の所在を把握すべく行う調査手順も定められてる。
特筆すべき点として、受益団体による孤児著作物の使用は非営利目的に限られていることが挙げられよう。また、これら受益団体の「公共の利益に適う」という使命を果たすため、その保有する著作物の保全や修復のみならず、文化及び教育の観点から著作物を公開することが義務付けられていることも忘れてはならない。
マリナ・イスマエル (Ismael Marina)
ヴィラ法律事務所
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2016年7月1日