国際、国内レベルに関わらず、司法・経済的なリスクの多くは商品売買上の商取引関係から派生する。時に複数の当事者(売主、買主、運送業者、荷受人、通関業者)が、売買のあらゆる商業関係に内在する潜在的な危険(輸送中の事故、保管・メンテナンス・輸送時の不適切な状態による商品の喪失及び/または消費期限切れ、 物品関連書類の紛失)の発生時に関与する可能性に留意し、売主、もしくは買主への事前かつ適切なリスクと費用の負担分配は、紛争が生じた場合に決定的な結果をもたらす。
国際商業会議所(ICC)が従来の規則インコタームズ(Incoterms)2010の改正案を採択により、2020年1月1日付にて、インコタームズ2020が発効した。当事者が費用とリスクの分配に関する当該規則の適用を決定している場合、その具体的かつ確固とした内容により、1980年に採択された国際物品売買取引にかかるウィーン条約に優先されることとなる。
インコタームズ2020は、物品売買取引関係の枠組みの中で、企業間が実践している商慣行を反映した具体的な規則にて構成されており、国内外を問わず利用可能である点は、言及に値するであろう。
当該規則の重要性は、当事者が負担すべき義務(輸送、保険、出荷書類、輸出・輸入ライセンス)、費用の共有(運賃、梱包費、積載・荷卸費用)、とりわけ、売主から買主への危険負担の移転の分岐点(基本的には、商品引渡し場所及び時間に応じる)の特定にあると言える。
前述の規則は、契約や支払い手段を構成するものではなく、また、物品の所有権移転および/または物品所有、物品の詳細、支払い方法、不可抗力もしくはサービス提供時の過度の負担、紛争解決システム及び/または裁判管轄権及び/または適用法令等、商業的な取引関係の本質的な側面を規制するものではないことに留意することが、重要となる。従って、インコタームズは、契約書の規定を置換するものではなく、むしろ補完するものであるため、当事者間で合意されたすべての条件を契約書に反映させることが常に望ましいといえる。
インコタームズ2020は、以下の2つのクラスに分類できる(i) いかなる単数または複数の運送手段にも適した規則(EXW、FCA. CPT、CIP、DAP、DPU、DDP)および(ii) 海上および内陸水路運送のための規則(FAS、FOB、CFR、CIF)。
(i)のクラスの中では、売主にとって最も有益な規則から、最も不利な規則までを見出すことができる。
すなわち、EXW(Ex Works)規則では、販売会社に対する最小限の義務が伴う。この場合、売主が貨物の保管や保険契約の義務を負うことなく、売主自身の施設又は別の合意された適切な場所で買主が商品を利用可能となる状態で引渡しが行われるため、国内取引に特に適している(売主は輸出業務を行う義務がない)。これとは反対に、DDP(Delivered Duty Paid)規則は、指定された場所において買主が商品を利用可能となる状態で引渡しが行われるため、売主にはより多くの義務の履行が伴う。この場合、商品の売買契約において別段の定めがない限り、売主は荷下ろし、輸送、輸出入業務、さらには付加価値税やその他の税金の支払いについて責任を負う。
第2クラス内でも義務は異なる。例えば、FAS(Free Alongside Ship)規則の場合、引渡しは売主が指定した港又は指定された出荷港において荷物が船側に置かれた時点で発生し、以降は危険及び費用の負担は売主に移転する。売主は輸送の費用や危険の負担、保険契約の義務を負わないが、商品の輸出業務を担う。CIF(Cost Insurance and Freight)規則では、売主は、出荷港において船上にて買主が利用可能な状態とし、仕向地までの輸送及び最低限の保険を自らの費用で契約し、輸出業務を担わなければならない。
結論として、商品売買の商取引に起因する費用及びリスクを回避するために、必要な条項をすべて含んだ売買契約を作成し締結することを強く推奨する。また、適用するインコタームズを選択及び変更する場合には、第一に、具体的なケースごとに最適な規則を正しく選択することで合意し、第二に、当該選択を正しく具体化する、すなわち、選択したインコタームズの具体的な規則(DDP, CIF等)や具体的な引渡し場所や仕向地、及び両当事者によって選択されたインコタームズの性質等を明記することである。
ボスク・ ミレイア (Mireia Bosch)
ヴィラ法律事務所
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2020年11月6日