EU域内中小企業の規模とインフレ適応

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2023年10月17日付にて、欧州委員会は、特定の種類の企業についての連結財務諸表および関連報告書に関する2013年に施行されたEU指令第2013/34/EU号(以下、EU「会計指令」という)を改正する、委任指令2023/2775号(以下、EU「委任指令」という)を施行した。

今回の改正は、EU域内の企業群および企業グループを規模毎に法的分類する決定基準を、ユーロ圏のインフレに適応させることを目的としている。具体的には、「総資産残高」もしくは「純資産残高」、および「純売上高」(スペインでは「年間売上高の純額」と呼ばれる)の2つの会計基準の基準値が25%引き上げられることとなった。第3の基準である企業、グループの総従業員数は変更されない。

25%の引き上げは、会計指令が施行された2013年から新指令が公布される2023年の間のユーロ圏の累積インフレ率にまで依拠する。

分類システム

当該調整の重要性を理解するためには、企業規模の用語がどのように定義されているかを理解することが極めて重要である。EU会計指令は、企業の規模を、零細・小規模・中規模・大企業、企業グループとして、小・中・大に分類している。

本分類システムは、純資産高、純売上高、会計年度中の平均従業員数の3つの基準に基づいており、各基準について、企業およびグループの各カテゴリーに基準値が設定されている。従って、企業またはグループは、会計年度末に3つの基準値のうち2つを満たす区分に属するとされる。

2013年以降、どのカテゴリーにおいても基準値の変更がなされておらず、そのうちの2つが会計基準限定であることに留意すると、分類システムの厳格さと比例性のレベルを維持するためには、インフレ対応をして基準値更新を行うことが合理的であると思われる。このため、欧州委員会は、企業規模を決定する基準を過去10年間、特に過去2年間にEU圏が経験したインフレ率に適合させるように指令を改正した。

改正後の分類システムは、以下のようになる。

I. 企業

a)零細企業

             2013年以降の基準値                 新規基準値(2023)
総資産残高           350.000 €             450.000 €
純売上高          700.000 €             900.000 €

 

b) 小規模企業

             2013年以降の基準値                 新規基準値(2023)
総資産残高            4.000.000 €              5.000.000 €
純売上高            8.000.000 €             10.000.000 €

 

c) 中規模企業

             2013年以降の基準値                新規基準値(2023)
総資産残高          20.000.000 €             25.000.000 €
純売上高          40.000.000 €            50.000.000 €

 

d) 大企業

             2013年以降の基準値               新規基準値(2023)
総資産残高             20.000.000 €            25.000.000 €
純売上高             40.000.000 €           50.000.000 €

 

II.企業

a)小規模グループ

            2013年以降の基準値                新規基準値(2023)
総資産残高           4.000.000 €                5.000.000 €
純売上高           8.000.000 €                10.000.000 €

 

b)中規模グループ

             2013年以降の基準値              新規基準値(2023)
総資産残高             20.000.000 €             25.000.000 €
純売上高             40.000.000 €            50.000.000 €

 

c)大グループ

             2013年以降の基準値              新規基準値(2023)
総資産残高           20.000.000 €           25.000.000 €
純売上高           40.000.000 €           50.000.000 €

 

小規模企業および小規模グループに区分される基準値のケースでは、EU各加盟国は、総資産残高750万ユーロ、純売上高で1,500万ユーロを上限として、委任指令に定める基準値よりも高い数字を国内法に定めることができる。

委任指令のスペインの法制度への影響とその置換え

当該措置は、スペインにおけるEU企業の財務諸表提出およびその他の報告義務に関して、特に重要な法的・経済的影響を及ぼす。同様に、これらの基準値の調整により、行政負担が軽減され、特に売上高のあまり高くない有限責任会社(Sociedad Limitada)において、特定の報告義務が免除される企業も出てくると推測する。

EUの立法者は、現在起こっているインフレ対策として、EU域内のインフレが特別な影響を及ぼし、資本会社の法律上・税務上の決定に関連する、売上高の基準などのすべての金額をアップデートすることで、必要な措置を講じた。しかし、このような措置を講じることは、スペイン法制度では一般的ではない。

しかしながら、当該委任指令がスペインの法律上で完全に効力を発揮するかどうかを見極めるには、実際にはしばらく時間を要する。具体的には、スペインの立法者は商法、資本会社法、会計監査法、および中小企業向けの一般会計計画や一般会計計画(2007年11月16日付スペイン勅令第1514号)等を、前述の会社およびグループのカテゴリーに影響あるいは発展させるすべての法的規定を、当該指令に適応させなければならない。

委任指令のスペイン法への置換えは、資本会社法の定め、特に、公開有限会社(Sociedad Anónima)および有限責任会社(Sociedad Limitada)の計算書類作成時における会計情報報告義務、特に貸借対照表作成義務(同法第257条)または要約年次報告書提出義務(同法第261条)との関連において重要である。

最後に、委任指令に定める新しい基準値は202411日以降に開始の会計年度に適用される。しかし、EU各加盟国は、2023年以降に開始する会計年度に適用する権限を与えられていることを考慮すべきである。スペインでは、202411日以降の会計年度に、委任指令の新規定を適用すると予見する。

 

フリオ・ゴンサレス (Julio González)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2024年3月15日

2024-03-15T16:14:26+00:0015/03/2024|EU規則, 会社法|

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