ルセロナ県裁判所第15法廷は、7月27日付判決第1068/2021号(「本件判決」という)により、第一審において会社に対して提起された支払請求行為は認められたものの、スペイン資本会社法第367条に基づきなされた取締役の客観的責任請求が認められなかったことを不服とした控訴を、2020年6月1日から3ヶ月間計算書類の提出義務の猶予を認めていたCOVID-19規制措置の適用がされたため、2019事業年度にかかる計算書類の提出の欠如は関連性がなかったことを考慮した上で、判示した。

控訴人は、COVID-19関連特別措置に規定されていた年次計算書類の提出猶予の適用を害することなく、資本会社法第367条第2項の定める推定が継続して支配されるべきであるという議論にその主張の根拠を置いた。当該条項によれば、被告取締役は、会社が債務を負う前に、入手可能な会計文書によって、会社が相当な損失状況になかったことを証明する責任を有する、とした。

控訴審の第三の判決理由において、裁判所は資本会社法第367条に規定される取締役の責任の性質及び要件について分析をしている。

性質については、当該責任は「法による責任」又は「客観的責任」と説明しており、その根拠は、強制解散事由の存在を認識してから2ヶ月以内に株主総会を開催しなければならないという法の義務に取締役が違反したとし、損害の発生や因果関係、取締役の行為における過失の存在の証明は不要としている。

要件については、以下のものが必要であるとしている。

  1. 原告債権者に対する会社の債務の存在が証明されていること。
  2. 被告取締役が会社の解散事由が明らかになった時点、及びその後の2ヶ月間、当該役職にあったこと。
  3. 取締役が会社の解散決議又は解散事由を排除するための決議を行うための株主総会を招集しない状態で、当該期間が経過したこと。
  4. 請求されている債務が、会社の法定解散事由発生後に契約もしくは生じていると推定できること。

裁判所は以下の評価をしている。

  • 2020年3月の緊急事態宣言発令中の計算書類の作成及び提出義務の猶予措置の存在は、資本会社法第367条第2項に定める推定を排除せず、また、当該債務を負担する時点において会社が法定解散事由に該当していなかったことにかかる被告の証明義務も排除しない。
  • 民事訴訟法第217条第7項に定める立証容易性の原則に照らして、計算書類の作成及び提出の欠如は、当該証拠資料にアクセスできる会社の取締役の立場にある者に不利益をもたらす。したがって、本件において計算書類作成の欠如は、債務会社が当該債務発生時において法定解散事由に該当していたことを推定するのに十分な根拠である(会社は倒産手続を申請し、宣告を受け、破産財団不足のため終件扱いとされていた)。

2017年3月24日付判決は以下を判示している。

「本件のように、善管注意義務(スペイン商法第25条以降及び同資本会社法第253条)の完全なる違反及び会社取締役が有していた立証の容易さが明らかであること(資本会社法第217条第6項)は、立証責任の逆転を伴うべきであり、取締役は自身が経営する会社の財務状況又は規則により要請されるエクイティバランスを証明しなければならず、そうでなければ、それら事実の欠如によりもたらされるネガティブな結果に直面しなければならない。」

  • 資本会社法第367条第2項の推定は、その推定を反証する会計上の証拠書類を提出することなく行われるべきである。
  • 取締役に要求される善管義務は会計基準に準拠して、真実性及び公正性の原則に従って、取締役が管理すべき会計をタイムリーかつ適切に把握する義務を意味する。会社の損失によって法定解散事由に該当することの認識は、会社の資産状況及び財務状況についての知識を提供する、法に定められた計算書類やその他の会計手段から取得しなければならない。重要なのは、損失による会社の解散事由をいつ認識したかではなく、いつ認識すべきだったか、である。

これらすべてを鑑み、裁判所は本件控訴について、取締役に課された客観的責任請求を認め、請求された会社の債務についての取締役の責任を宣言した。

 

 

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2021年11月26日