2018年4月11日付スペイン最高裁判所判決は、会社の債務に対する取締役の連帯責任に関して、それまでの原則を支持する判断を示した。具体的には、会社が融資を受けた時に債権者が本会社の債務不履行のリスクを認識していたという状況下における取締役の責任に関しての判断である。

本件は、一見通常通りに経営されているように見受けられていたが、実は法定解散事由に該当する状態にあったある会社に対する判決である。そのような状態であったにもかかわらず、当該会社の二人の取締役は、会社解散を行わず、また、法の定める資産のバランスを回復させるための措置もとらずにいた。加えて取締役は、おそらくは会社の純資産が実際にはネガティブであることを隠匿するために、商業登記所に毎年の会計書類を提出する義務を数年間怠っていた。

本件の債権者は、債務者である会社に対し、二年の間支払いが滞りがちでありながら、材料を供給し続けた。上記取引関係の過程で、債権者によって承諾されなかったものの、債務者が債権者に対し債務整理合意のための事前調整を行う意思を表示したことは、言及するに値する。

最終的に債権者は、会社及びその取締役に対して、債務の支払いを求める訴訟を起こした。原告側は、取締役の連帯責任を追及する事実要因として、解散事由の存在を認識してから2か月以内に株主総会を開催する義務を怠ったことを挙げた。法的根拠としては、旧有限会社法第105条第5項(現資本会社法第367条)解散事由を認識してから2か月以内に株主総会を開催し、解散の決議を採決しなかった場合、取締役が債務に対し連帯責任を負う、という規定を示した。

第一審判決は債権者の論拠を認め、会社及び二人の取締役たちの会社に対する責任に基づき、その債務返済を求めた。法的根拠としては、有限会社法第105条第5項を引用した。債務会社の取締役の一人は本判決を不服として、これを控訴した。

サラゴサ県の上級裁判所は控訴人の主張を支持し、取締役を会社債務の連帯責任から解放した。本判決の根拠は、債権者が債務者の経済状況を認識していたにもかかわらず、取締役の連帯保証を求めなかったこと、債権者が債務不履行のリスクを予見できたこと、という事実にあるとした。加えて、債権者の取締役と、債務会社の取締役の一人はいとこ・友人関係にあることを指摘した。控訴審判決は、その見解の根拠として2011年11月23日付および2013年4月14日付の二つの最高裁判所判決を引用した。

控訴審判決を不服として、債権者はこれを最高裁判所に上告した。

最高裁判所は、その判決の中で以下に挙げる事実関係を示した。

1)本件の債務は解散事由が生じる以前に発生したものであることは証明されている。

2) 状況を把握しながら、取締役達は会社の解散を回避するための措置を取らなかったことは証明されている。

3) 債権者が本会社の危機的状況を把握していたことは証明されている。

上記は全て事実であり、特に「債権者が債務者の経済状況を把握していた」という事実要素は一致していた。しかしながら最高裁判所は、債権者が債務者の経済的リスクを把握していたにもかかわらず債務者とのビジネス取引を続けていた場合は、債務会社の取締役は本債務の連帯責任を問われないとし、債権者が破産状態にあったという事実を単に把握していたのみでは、取締役の責任を免除する理由として不十分であるとし、第二審の主張を退けた。

最高裁は、債務者である会社が破産、もしくは財政が悪化している状態に加えて、債権者が不法行為を行った場合は、債務会社の取締役を免責にする可能性を示した2013年12月4日付の最高裁判所判決に言及し、これらのすべての事実関係は、取締役を免責にするために必要な条件であるが、それだけでは十分ではなく、債権者が、債務会社の債務不履行のリスクを認識していていたことを証明でき、債務会社の内実を知った上で管理できるような別の条件も考慮する必要がある(例えば、債権者が債務会社の支配的、もしくは関連のある株主である場合のように)とし、本件に適用する判例の要件の定義を明確にすることで結論づけた。

最高裁判所は、取締役の会社に対する責任の原則の例外の解釈において、一般的な規則を変性させるような例外規定を自動的に適用することを避け、分析中のケースを取り巻く個別の事実関係を照らし合わせて判断すべきという立場をとっている。これは、商業取引において優先すべき法的安全性に影響を及ぼす可能性がある。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年4月27日