スペインにおいて会社設立、または既存の会社の増資が公的効力を持つための要件の一つは、合同会社においては出資持分の額面価格を全額の払い込みがされること、株式会社においては株式の額面価格の少なくとも4分の1の払い込みがされることである。(資本会社法第78条及び79条)

周知のように、出資は金銭による場合と、金銭によらない場合がある(資本会社法第61〜72条)。金銭による出資の場合、資本会社法第62条(商業登記所規制第189条と実質的には同じ手続きについて定めている)は、金銭による出資の事実は会社設立、または増資の実施に関する公正証書(株式会社の場合はその後続けて実施される株式の払い込みにかかる公正証書)を作成した公証人によって文書化されなければならないと定められている。

論点となるのは、金銭による出資の事実をどのように証明すべきか、そして、どこに入金することができるかという問題である。

払込の証明方法として、資本会社法第62条は、信用機関に開設された当該会社名義の口座に出資に相当する金額が預託されていることの証明書を信用機関が作成し公証人がこれを公正証書内に含めて提出する方法、もしくは、同金額を公証人に渡し、公証人自身が会社の名前で会社の設立を行う方法(この方法は実務においてはあまり用いられない)のいずれかによるものと定めている。

しかし、最終的には金銭による出資が信用機関に入金されたことを証明しなければならない。(それゆえ、他の機関への入金や公証人への預託は認められない。)

資本会社法が言うところの『信用機関』の定義を理解するには、直近の2016年9月7日付法務省登記・公証局の決定が興味深い。(2016年9月30日付政府官報-A-2016年第8947号)

本件において、新たに会社持分を発行することにより増資を実施することを決定した、合同会社の株主総会決議に公的効力をもたせた。この会社持分は、金銭による出資により引受がされ、その事実は金融機関にある当該会社名義の口座に会社持分の引受のための払込金額が預金されていることの証明書により証明がされた。

しかし、払込金が入金された銀行は外国の銀行であったため、当該証明書は資本会社法第62条の定める内容に即していないと考えられることを理由に、当該増資にかかる公正証書はマドリードの登記官に却下された。これを受けて、当該公正証書について別の公正証書によって釈明が試みられた。新たに作成された別の公正証書には、本件で問題となっているスイスの金融機関は銀行・証券会社として許認可を受けていることを説明するスイス連邦政府金融市場監督によって発行された証明書が付けられた。しかし商業登記所は却下の決定を維持した。

登記官の決定に対し異議申立てが行われ、法務省登記・公証局によって2016年9月7日決定が出され、2016年9月30日政府官報に公表された。決定で登記・公証局は資本会社法第62条第1項に照らして、預金のある銀行が外国のものであったことで、そこで発行された証明書の有効性が損なわれることはないとの判断を示した。この意味で、公証人によって公的効力を与え、登記官が登記をするにあたって行う増資の決議の合法性の検証のために必要となる法的証拠は、資金が信用機関において会社名義で開かれた口座に入金されたかどうかであり、不必要または重複するような要件を課すようなその他の方法を要求することは法に則っているとはいえない、との見解を示した。

そして、登記・公証局は、それを妨げる法律がない以上、金銭による出資金の払込が実施されるべき金融機関は、スペイン国内の金融機関に限られるべきではないと結論づけた。

結論として、払込金の入金がされた口座のある機関がその国によって許認可を受けている信用機関であれば、外国の金融機関の口座に入金された払込金はスペインでの会社設立または既存の会社の増資の際に公的効力を持たせるために有効である。

 

 

ビジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2016年10月28日