2021年4月13日付スペイン政府官報にて公示された2021年4月12日付法第5/2021号は、2017年5月17日付欧州指令第2017/828号を国内法令に置き換えることを目的としている。また、この法により、資本会社法のかなりの部分の改正がなされた。本稿では、本法律によって資本会社法に新設されたグループ企業間取引にかかる第231条bisについて確認する。
a) 株主総会の承認を要する取引
新設された第231条bis第1項により、支配会社又は同一企業グループに属する他の会社と行われる取引のうち、利益相反取引の対象となるものについては、以下の2つのいずれかに該当する場合には、株主総会の承認が必要とされる。
(i) 取引の性質により株主総会にその管轄権限が保留される取引
(ii) 取引額又は総取引額が会社の資産の10%以上の場合はすべての取引
b) 経営組織の承認を要する取引
株主総会の承認の対象となる取引以外の支配会社又は同一企業グループ会社との取引で利益相反取引の対象となるものについては、経営組織(取締役会や取締役)が承認権限を有する。
承認決議を行う際には、利害関係人に該当する取締役も決議に参加することができる。この場合、当該取締役の投票が決定票となる場合には、当該決定票は会社、もしくは、異議が唱えられた場合に当該取引が会社の利益に準拠していること、及び、取締役の責任が要求された場合には適切な誠実及び忠誠義務が果たされていることを利害関係取締役が証明できれば、当該利害関係取締役に属するものとされる。
なお、経営組織の承認権限は他の社内の代理機関に移譲することができる。ただし、当該取引が会社の通常業務の範囲内で行われる場合に限られ、これにはマーケットの条件において締結された契約又は枠組み契約の締結が含まれる。権限移譲をするにあたり経営組織は、上記要件が満たされているかを定期的に評価する内部手続きを導入しなければならない。
本条に従った承認決議を経た場合には、子会社と締結される取引は、利益相反対象となるグループ企業との取引とはみなされない。ただし、利害関係人取引制度の適用なしでは直接取引を行うことができない者が子会社の主要株主である場合は除かれる。
本条文は2021年5月3日に施行されている。
最後に、株主総会又は経営組織の承認の対象となるのは、あくまで利益相反取引に該当する場合である。したがって、100%親会社との取引、100%子会社との取引、又は100%親会社を同一とするいわゆる兄弟会社との取引は、見返り利益がなく利益相反関係が存在しないため、この承認制度の対象とはならない余地があると考えることができる。
露木 美加
ヴィラ法律事務所
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2021年5月7日