本稿では、2021年10月4日から7日まで開催される予定である、第6回バルセロナ弁護士会会議中に行われるウェビナー「賃貸借不動産と仲裁」に関連して、都市部における賃貸借契約(住宅、オフィス、商業施設、駐車場など)に関する紛争解決に仲裁が適切な方法であるかを検討しようと思う。

スペインの法制度において、仲裁制度は、通常の裁判制度に代わる紛争解決メカニズムとして定められており、あっせんや調停、仲裁合意とは異なり、仲裁判断は当事者を拘束し、執行可能な権原を構成する。

スペイン憲法第47条は、市民に適正・適切な住宅へのアクセス可能とするために必要な条件を促進することを、公的機関に委ねている。

上述の法制度下、マドリード州政府は2008年に「賃貸借仲裁評議会」を設立した。当該評議会は、州内の住宅行政省に属する技術的・諮問的性質を有する合議体となる。その活動範囲は、公共不動産賃貸借契約、及び当該評議会定めた仲裁システムに関する管轄条項が含まれている民間不動産賃貸借契約の両方を対象としている。

同様に、仲裁評議会は、評議会に提出される賃貸借に関する紛争を解決する仲裁人を含む、様々な仲裁機関と協定を締結しており、加えて、仲裁協議会の仲裁制度を顧客に広めるために様々な法律事務所とも協力関係にある。仲裁人の報酬は評議会によって定められ、評議会による仲裁費用の一部をカバーするために、60ユーロ+付加価値税の手数料を支払う必要がある。

実務上、賃貸借契約に関する紛争解決に代替手段を用いる必要性は、司法機関の混雑を理由とするだけではなく、パンデミックと共存するこの1年半の間に、電子的手段及び対面手続のコンビネーション対応が可能な柔軟性から、明白となった。

他の自治州も同様の仲裁制度を導入することで、賃貸借不動産関連の紛争解決に即答性をもたらす事となり、裁判所の混雑緩和、及び賃貸不動産市場の活性化が促進され、ひいては司法行政及び経済活動に利益をもたらすことになろう。

 

 

ビジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2021年10月1日