世界知的所有権機関(WIPO)の定義によると、「仲裁とは、当事者の合意に基づき、1名の仲裁人もしくは複数の仲裁人による仲裁廷により、ある議論に対して当事者が行うべき義務につき判断を下す手続きである。仲裁を選択する場合、裁判を行うのではなく民事的方法にて紛争の解決を行うこととなる。」
有効な仲裁条項の重要性について
仲裁の基本理念は当事者の自主性に基づく自治であり、その最たる現れが仲裁合意である。この合意により当事者双方は、一人または複数の仲裁人に特定の法的関係について生じうる紛争の解決を委ねるために、裁判管轄を明確に放棄する。
仲裁合意は、それが法的効力を有しかつ有効である場合に限り、当事者双方に対し規定の遵守を義務付け、仲裁が行なわれている紛争について裁判所の介入を妨げる。仲裁合意の記述は、混乱を招く、一貫性に欠ける、または無効と思われる内容であってはならない。例えば、両当事者が訴訟手続きと仲裁手続きを同時に行うことを認めるような記述や、両当事者が手続きを希望する仲裁機関を正確に認識できないような記述、または、具体的に仲裁人を特定したものの、実際に仲裁手続きが始まった際に(独立性や公平性の欠如、または定年退職等の理由により)、仲裁人としての指名を受けられなくなるといった場合などである。
仲裁条項に不備がある場合、当事者の一方は、紛争は仲裁によって解決されるべきと考え、他方当事者は当該紛争は裁判によって判断がされるべきと考えるような事態を招きかねない。このような状況においては、原告の態度によって申立てが仲裁機関、裁判所のどちらになされるかが決まる。
これは、場合によっては仲裁人または裁判官の裁判管轄の欠如についてのつまらない論争を巻き起こす可能性があり、結果として問題の本質を評価することを妨げ紛争解決を遅らせるだけでなく、当事者双方とって著しい経済的負担を強いることになる。
仲裁条項に含まれるべき要素について
仲裁条項に不備がないようにするため、アドホック仲裁ではなく仲裁機関による仲裁による紛争解決を選択する場合には、当該仲裁機関の定めた仲裁条項モデルを使用することを推奨する。また、以下の事項を仲裁条項の内容に含めることは、仲裁の効果的な実施を促すこととなる。
- 仲裁機関/場所
- 仲裁人の数 (仲裁人一人または複数の仲裁人における仲裁廷)
- 仲裁人の任命方法 (アドホック仲裁、指名機関による任命)
- 仲裁言語
- 適用仲裁規定
- 契約の実質的準拠法
- 仲裁の裁定の目的 (「確定かつ当事者を拘束するもの」)
当事者の一方が、仲裁合意に基づくある紛争の裁判管轄について正当化し、または異議を申し立てた場合に、仲裁人もしくは裁判官が評価すべき事項は、問題となる仲裁合意を作成した時点における両当事者の真の自主性はどのようなものであったかという点であると言える。
ビシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)
ヴィラ法律事務所
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2016年5月6日