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2025年4月3日付にて「司法行政手続き効率化措置に関する基本法」がスペインにおいて施行予定である。その主な注目点は、これまで単独審であった現在の第一審民事裁判所及び刑事裁判所を、合議制第一審裁判所(Tribunales de Instancia)に置換えることである。当該改革により、現在3,800存在する単独審裁判所が431の第一審裁判所となる。

当該改正に先行して、現在のスペイン司法制度が内包する構造的問題に関し、真摯かつ長期にわたる議論が交わされた。この問題としては、訴訟手続き及び解決の飽和と遅延、人材配置の硬直性、裁判官と判事の専門性の欠如、各司法管轄区における権限の重複、超過業務や代替裁判官の高い離職率等が挙げられる。

今回の改革による新組織構造によって、より良い人材配置、より高い専門性、より均質な司法判断が実行されること、そして、裁判所の飽和状態や訴訟手続きの遅延が緩和されることが期待、意図されている。

今後は、各司法管轄区に第一審裁判所と、今回新設される第一審中央裁判所(Tribunal Central de Instancia)が存在することになる。いずれも合議制の司法機関となり、第一審裁判所の裁判官が裁判長となる。第一審裁判所が8名以上の裁判官で構成される場合、部(Sección)の長が任命される。

実施、構造、組織については、以下の通りである。

(i)(民事)裁判所と(刑事)予審の管轄が共有されている司法管区では、「民事(Civil)」及び「予審(Instrucción)」の部が1つずつ設置される。これらの機関では、2025年4月までに新しい裁判所の実施が完了する予定である。

(ii) 管轄が分かれている地区では、2つの異なる部が設置される。1つは「民事」、もう1つは「予審」である。これらの機関では、2025年10月までに新しい第一審裁判所の実施が完了する予定である。

(iii) 特定の分野(例えば、女性に対する暴力)を専門とする機関を有する司法管区では、異なる部が設置される(例えば、家族・児童・教育部、女性に対する暴力部、児童及び青少年に対する暴力部、未成年者、刑事、刑務所監視、争訟行政、社会問題などを専門とする部など)。これらの機関では、2025年12月までに新しい第一審裁判所の実施が整う予定である。

改正の施行にあたる課題

第一審裁判所の設置には、改正の成功を危うくしかねない多くの課題がある。

まず、法律の施行と実施期限は、政府が改正の規制策定を承認するのに与えられた時間と一致していない。具体的には、政府は法律が施行されてから6ヶ月間という期間で、規制面での改正を推進しなければならない。しかし、多くの新裁判所、すなわち第一審裁判所と予審裁判所の管轄が重複する司法管区の裁判所は、その運営に関する規定がまだない可能性があるにもかかわらず、わずか3ヶ月間で設立しなければならない。

その一方で、特に専門部門を持つ新しい裁判所の予想される業務量をこなすだけの裁判官、検察官、裁判所事務官が現在不足していることも忘れてはならない。これに加えて、退職者の補充も不足している。毎年少なくとも300の司法ポストを補充する必要があると推定されているが、現時点では毎年100ポスト程度しか公募されていない。

この組織改革が、司法判断の意味を画一化しようとしている点も、同様に憂慮すべきである。実際、法律では、基準を統一するために分野別の裁判官委員会の設置が明示的に規定されているが、これは司法の独立の原則と両立させるのが難しい可能性があり、また、実際には適用するのが容易ではないだろう。改正が実施された後、このモデルが長期的に維持できるかどうかは、今後の成り行きを見守る必要がある。

これに加えて、インフラの不十分さや地域格差の問題もある。司法機関の一審裁判所への集中化には適切な本部が必要であるが、現在のインフラの一部は、この変化に対応できる状態にはまだない。さらに、自治州間のリソースの配分は不平等であり、司法へのアクセスに2つの速度、あるいは複数の速度が生じる恐れがある。さらに深刻なのは、この組織改革に必要な予算配分が現在まで承認されていないという事実であり、改正が予定通りの期間内に実施できるかどうかが疑問視されている。

つまり、この改正は司法制度の近代化に向けた一歩を踏み出そうとするものであるが、その成功は適切な計画、十分なリソースの配分、適切な規制の策定、そして秩序ある実施にかかっている。

 

フリオ・ゴンサレス(Julio González)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2025年2月14日

2025-02-21T12:05:35+00:0014/02/2025|訴訟・仲裁|

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