肖像権、特に、個人の画像を明示的な同意なしで公開されない権利は、スペイン憲法や、1982年5月5日付名誉権、個人及び家族のプライバシー権、肖像権に関する基本法第1/1982号、及びEU一般データ保護規則(GDPR) 等の異なる規制の観点から、具体的な案件を検証可能な概念である。

最初に、スペイン憲法第18条は、名誉権、個人及び家族のプライバシー権、肖像権を保証しており、これらの権利の保護に関しては前述の基本法第1/1982号にて、個人や家族の評判及び名誉に影響を与えるような私生活関連事実の開示、同様にある個人の私生活の場、 時間における画像、フィルム、或いはその他の方法による肖像の公開、もしくは基本法第1/1982号第82項規定(公人もしくは著名人が公的行事又は公衆に開放された場所で撮影された場合、人物の画像が単なる附属である場合の公共行事でのカリカチュア又はグラフィック情報)に該当する場合を除き、私生活以外の場所、時間における画像、フィルム、或いはその他の方法による肖像の公開した場合は、違法な干渉であると説明している。

他方EU一般データ保護規則は、特定されたまたは特定可能な自然人(データ主体者)に関する直接、間接的に関わらない全ての情報、とりわけ名前、身分識別番号、位置データ、オンライン識別子、または前述のデータ主体の身体的、生理的、遺伝的、心理的、経済的、文化的、社会的アイデンティティの1つ或いは多くの要素からなる識別子を個人データと定義する。従って、画像は個人データに属する。

これら全て規制は、当事者の明示的な同意なしに公開される画像や情報の取扱いは、全て違法とすることで一致している。

特筆すべきケースとして、2017年2月15日付第91/2017号スペイン最高裁判所にて、ある刑事事件(被害者は兄の発砲により負傷。兄はその後自殺)に関し、ある地方新聞が関係者の個人情報(被害者と兄の名前、苗字のイニシャル、兄のニックネーム、正確な家族住所、地元での家族のよくない評判等)を含んだニュースの詳細を、被害者のFacebookのアカウントより取得した被害者写真とともに報道したことに起因しての訴えの中で、以下を検証したのでここに取り上げる。

最高裁判所は、本件に関し、二つの事実検証を行った。第一に、報道の自由と個人と家族のプライバシー権のバランスについて言及した。この観点では、報道の自由が優先されるべきであるとの判断を示し、新聞社は何ら違法行為を犯していないとした。重要な判断根拠は、以下であった。

a) 本件新聞の配布範囲がたいして広くないことから、重大なプライバシー侵害とならない。

b) 関係者の尊厳を特に損なう種類の(例えば、性犯罪のような)事件ではない。

c) 新聞記事に含まれた情報は、事件に関し周囲の人間が既に持っていた、または以後持つことになったであろう知識を著しく増加するものではなかった。

d)(刑事事件的観点から)客観的にも重大事件であり、報道価値がある

e) 本ニュースは、新聞の社会面記事に適合する種の記事であり、大袈裟で毒々しい描写もなく、事件と関係のない親密な事実も、兄弟の不仲の原因さえも開示していない。兄弟の母親がアルツハイマーを患っていたことへの言及は、母親が現場に居合わせていたため、本件に関連があった。

f) 地域的 (県レベル)で、ニュースへの関心が高かった。

第二に、まず肖像権について最高裁判所は、プライバシー権をも含む他の人格権の一つ、つまり基本的人権の一つであると強調した。

前記前提に基づいた上で、本件に関し最高裁判所は、Facebookのアカウントに本人の画像を公開しているという当事者の行為自体は、本人の同意なしに第三者が画像を複製することへの承認と解釈されるべきでなく、いわゆる明示的な同意には該当しないため新聞社の行為は個人情報の違法な取扱いにあたるとの、別途の判断を示した。ここに指す同意は、一般的にではなく、各具体的行為に排他的に付与されるべきであり、本件の場合、当事者が公人ではないため、画像が貸与されたと理解することはできないとした。同様に判決は、合法性の根拠としての同意は、常に取消し自由であるべきである、とした。

本件は、前述の基本法第1/1982号第8条2項の適用除外には該当しないため、画像が当事者のプライバシー権侵害にあたらないことイコール、肖像権侵害を排除しない。報道の自由は、事件には関係ない分野での当事者の画像を同意なく公表することの正当理由とはならない。

ソーシャルネットワークに写真を公開しているという事実により、第三者が写真にアクセス可能な為、データ主体者は、デジタルプラットフォーム提供会社に対していかなる請求もできない事を意味する。しかしながら、主体者本人の明示的な同意なしに第三者によって画像が利用された場合には、これに限らない。

結論として、暴力事件に対する公衆の関心、及びメディアが事件を報道、とりわけ事件の関係者の個人情報を含む報道内容に対する関心は、本人の明示的な同意なしに、ソーシャルネットワーク上のプロフィールから取得した事件被害者の画像の公開の必要性も、正当性も認めない、との判断を示した。前述の判例は、直近2019年12月19日付最高裁判所判決にても踏襲されている。

 

 

テラン・アンドレアス (Andreas Terán)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年3月13日