本稿では、倒産会社の従業員の給与債権が倒産手続においてどのようにみなされるかにかかる直近の判決、2021年3月2日付最高裁判決について取り扱う。なお、当該給与債権は倒産開始決定後の法的保証により弁済されていた。

本事案を理解するため、まず、前提事実を明らかにする必要がある。本事案は、ライフガードサービス及び水泳教室の業務を市のスポーツ協会から委託された企業との雇用関係に基づき、市営プール職員として勤務していた女性従業員に対する給与の支払いについて争われた。

当該女性従業員は第一審において、委託先企業と市のスポーツ協会の双方を連帯被告として訴えた。

保証人であった市のスポーツ協会は、判決に従って、判決により義務付けられた金額を、当該企業の倒産手続中に支払った。倒産手続中とは、すなわち倒産開始決定後、倒産手続完了前の期間である。

またここでは、以下に説明するように倒産手続外債権と倒産債権の差異を理解することが、非常に重要となる。

倒産債権は、倒産会社の倒産財団により弁済される債権を構成するものである。すなわち、倒産債務者がその事業活動において負った債務であり、倒産開始決定以前から存在しているものである。

倒産手続外債権は、倒産債権とは異なり、倒産開始決定がされた後に生じた費用や債務にかかる債権である。これらは破産債権よりも特別な優先的取り扱いがされ債権平等の原則に反するものであるため、制限的に理解されなければならない。

会社の法的保証人であったスポーツ協会による債権の支払いは、会社倒産中においてなされたことから、スポーツ協会は、当該従業員の給与債権を倒産手続外債権に分類するように訴えを提起した。しかし、その主張は第一審及び第二審においては却下され、そして、スポーツ協会は最高裁へ上告をした。

上告理由として、上告人は倒産法第84条2項10(現行法第242条)違反及び同条にかかる判例違反を根拠とし、同従業員の債権は、倒産債務者に代わって支払いがされた時点、すなわち、倒産手続開始決定後に生じたものであることを主に主張した。

最高裁は、スポーツ協会の支払いにかかる連帯債務の弁済は、第三者による支払いではなく、労働者憲章法第42.2条による支払いにかかる法的保証の問題であり、支払い後に支払った金額について、支払いをしなかったものから回収することを可能とするものである、との判断を示した。

上記が意味することは、スポーツ協会を拘束する当該従業員に対する義務は、労働者憲章法第42.2条によれば、その執行可能性がいつ生じたかに関係なく、上述の条文が規定する義務が履行された時点に生じたとみなされることである。本事案では、スポーツ協会は、倒産債権の支払いを行なった。したがい、倒産開始決定後に支払われたという事実は新しく債権が生じたということを意味するのではないとみなされることとなる。債権は既に存在しており、倒産債権の性質を維持している。したがって、当該債権は上告人の主張するような倒産手続外債権であるということはできないと結論づけられる。

 

 

マデロ・ハイメ (Jaime Madero)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年4月30日