2022年11月4日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が、翌12月2日付スペイン官報にて公示された。当該決定は、ある合同会社の減資にかかる公正証書の登記申請をマドリード商業登記所所属の登記官が却下したことに関するものである。
本件では、ある合同会社が行った自己株式の償却による減資についての株主総会決議にかかる公正証書が商業登記所に提出された。償却された自己株式7,644株は、事前に会社が取得したものであった。公正証書に含まれる決議証明書では、当該株式を会社に譲渡した株主の個人情報が「適切な目的のために」記載されていた。
登記官は、次の理由を根拠に、登記申請を却下した。: 「資本会社法第331条に規定する株主の連帯責任を果たすことができないため、同法第141条及び第332条に規定される、引当金の設定が債権者保護のために必要と思われるが、これ関する記載がない。」自己株式の償却が株式取得の2年後に行われ、結果として減資がされることを鑑みると、「登記申請を試みた会社の決議がなされた時点において株主ではないため、それを認識することもないであろうことから、以下のような場合には譲渡人である株主が会社の債務の連帯責任を負うことは期待できない。」(資本会社法第231条参照): 会社の債務が、譲渡人が株主でなくなった時点以降に生じた場合、当該自己株式の取得が資本会社法第140.1条d)に定められる原因に基づき利益または準備金を用いて実施されることが可能であった場合、自己株式が処分のために取得された場合、及び資本会社法第142.2条の準備金を設けることが必要である場合。
この却下通知に対して、公正証書を作成した公証人から、以下の内容を宣誓する補足宣誓書の提出がされた。
1) 自己株式の取得価格は額面価額と一致していること。
2) 譲渡人は減資における会社債務の連帯責任について認識しており、本件減資にかかる公正証書について認識及び合意していること。
本補足宣誓書の提出を受け登記官は、責任を負うとされる譲渡人は既に社外の人間であることを強調し、自身の判断を以下のように再確認した。「当該株式譲渡が実行された時点以降、譲渡人は会社から完全に切り離され(以降、会社の株式を全株手放した)、会社持分のその後の処分(転売または償還)においても譲渡人は完全に無関係であることから、譲渡後の自己株式償還のために、以前になされた株式譲渡の法制度を訴求的に修正し、譲渡人の意思を超えたその後の事実から生じる結果を譲渡人に課すことは法的に難しい(憲法第9条及び商法第2条、第1257条及び第1258条)。」「今行われている減資を登記するには、資本会社法第332条の使用不可能な準備金の設定し、会社資産の保留値を維持することが不可欠であると考える。この保証は、たとえ当該第三者が従前に株主であったとしても減資時点で株主ではなくなっているのであれば、当該第三者が負う連帯責任に代えることはできない。」
この却下通知を不服とし、異議申し立てが提出された。
公文書管理局は、以下を根拠として、商業登記官の評価を却下し、異議申し立てを支持した。
公文書管理局は、登記官の却下通知において言及された2つの条文はそれぞれ異なる事案に影響を及ぼすとしている。第141.1条は自己株式の償却を用いた減資で当該自己株式の取得時に出資金の払戻しを伴わない場合、第332条は出資金の払戻しを伴う場合である。これら2条文を読むと、まず2つの結論を導くことができる。それぞれの規定は異なる事案について言及していること、及び、登記官が求める準備金の設定は償却された自己株式を会社が取得するにあたって譲渡人に対して出資金の払戻しを伴わない場合にのみ義務付けられるものであるということである。
減資が事前に同意された状態で自己株式の取得がされた場合にのみ出資金の払戻しがされるという登記官の説明について、公文書管理局は自己株式の償却が既に会社資産に計上されている場合には、採択された合意について当該性質は該当しないとしている。さらに、2018年5月22日の決定は「会社が有償で事前に取得した自己株式の償却は、出資金の払戻しによる減資に相当する」と明記しており、反対のことが宣言されている旨を確認した。
つまり、後に償却される自己株式の取得が対価を支払うことにより有償で行われたという理由のみをもって、実行された減資は出資金の払戻しにより生じる制度に準拠しなければならず、結果として資本会社法第331条から第333条に定める債権者保護制度を遵守しなければならない。
最後に、公文書管理局は「自己株式償却制度、具体的には資本会社法第342条の定める3年の償却実施期間については、”lege ferenda(立法論)”の立場から批判の対象であったことは留意すべきではあるものの、それら評価はその有効性に何ら影響を与えない。」と付言した。
ヴィラ法律事務所
より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。
2023年2月3日