会社の株主間に対立がある場合、株主総会議事録の作成及び承認が、複雑かつ不快な手続きとなる場合がある。このような事態を防ぐため、スペイン資本会社法は、議事録作成を目的として会社が公証人の総会への出席を要求する選択肢を提供している。株主総会出席者にとって公証人は権威ある存在として認識され、株主間又は株主、取締役間の対立の可能性を軽減するのに役立つ。
総会への公証人出席を要請する権限は専ら経営機関にあり、経営機関は、会社利益のために適切であると判断した場合に、そして、株主総会の少なくとも5日前までに株式会社の場合は資本の1%以上、有限会社の場合は5%以上の代表権を有する株主から要請があれば、これを行うことができる(資本会社法第203条第1項)。当該権利は、少数株主の権利を保護する仕組みとして設けられたものであり、定款による変更を可能としない強行規定であるため、この権利の行使について、法律の規定を超える最低割合を定めることはできない。
総会議事録公正証書は、通常の議事録と同様の証拠能力を有するが、公的文書として取扱われ、記録事実が公証人により認証されるという付加価値があり、総会中に発生しうる不規則行為が記録されるだけでなく、場合により、瑕疵ある決議に不服を申立てることを容易にするために、株主による留保又はその他の関連する陳述も記録される。同様に、本公正証書は株主総会の議事録としての価値を有すため、通常、議長及び書記役が証明機関として担っていた統制機能が公証人に委ねられることになる。これは少数株主にとって、議長及び書記役による濫用の可能性に対する追加的な保証となる。
しかしながら、議事録公正証書は、会社決議もしくは同書への記載事実の合法性の確立手段として機能しない。公証人の職務は、要請者の法的能力を評価すること、及び、定時株主総会の場合を除き、株主総会が適用法律上、及び定款上の要件に従って招集されたかどうかを確認することに限定される(商業登記規則第101条第1項)。公証人は、議事録に記録しなければならない一般的な事情(商業登記規則第97条)に加えて、議長及び書記役の身分識別、株主総会が有効に成立している旨の議長の宣言、株主総会への出席株主数、審議の経過、会社決議及びこれらに対する異議(商業登記規則第102条)を証明する。
従って、議長・書記役の責務である総会出席者リストの作成、及び議長責務である株主総会の有効な成立宣言は、公証人の介入範囲外である。議長はまた、株主総会の運営と議決権行使の結果の宣言にも責任を負う。株主は、これに対し意見を表明し、議事録に記録するよう請求することができる(商業登記規則第102条第1項第4号)。
つまり、公証人は、欠席株主等の代理人として総会に出席する者の委任状の有効性及び十分性について、例え付与された委任状に瑕疵があると考える場合であっても、その評価に立ち入ることはできない。使用対象となる特定の行為に関する委任内容の審査は、公証人の本来の権能であるため、公証人関与への当該制限は注目に値する。代理権限の瑕疵を理由に、株主総会開催が無効とみなされ、その結果、株主総会で採択された決議が無効とされるリスクを考慮すれば、なおさらである。
代理権の適否の認定は、特に対立ある総会においては、リスクを除外できない手続である。株主総会成立時に、出席者のいずれかが、代理人による出席を試みた株主に異議を唱えた場合を考えよう。株主総会運営陣が、提出された委任状の十分性を認め、代理人を出席者に含めることに同意した場合にもかかわらず、採択された決議に異議申立てがある場合に、当該委任状の十分性の証拠を書類によって証明しなければならないのは会社であり、議長を通じて行う。これは、代理出席者の委任状を議事録に添付することによって行うことができる。
この予防措置が守られず、決議に異議が出され、提供された委任状の十分性が他の方法で証明できない場合、当該証明の欠如は、不服申し立てをする機会があったときに不服申し立てをしてできることをした反対株主の不利益にはなりえず、会社の不利益にならざるを得ない。なぜなら、不服申立てされた委任状の十分性を認め、それを議事録の添付文書とすることによって本委任状の十分性を証明する機会を、総会議長を務めた人物を通じて、会社は有していたためである。
議事録公正証書は、承認手続きを必要とせず、議長又は書記役による署名なしで、それ自体が総会の議事録証明とみなされ(資本会社法第203条第2項)、会社の議事録簿にそのように転記される。
ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)
ヴィラ法律事務所
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2023年12月15日