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AI(人工知能)は、人間が提起する質問に対する意見、回答作成のために設計されたコンピューター製品であり、職業、および私生活の多分野における意思決定に既に非常に大きな役割を果たしている。個人の行動に、AIは決定的な介入をする。AIは、ある種の謙虚な個人アドバイザーとして、静かにしかし巧妙に、その存在感を確立している。彼らの意見は採用され、多くの場合事前の批判的分析もないままに額面通りに許容される。これは、現代人のテクノロジーの現状に対する信頼、疑う余地なき確実性という利点をテクノロジーに帰していること、電子機器との日常的なやり取りの影響から、あらゆる行動や反応が即座に起こされることを期待していることに起因する。

ビジネス分野、とりわけ統治機関においては、人間の判断が意思決定の礎である(少なくとも、直近までそうであったと言えた)。数年前、AIが単なる贅沢な技術形態以上のものに変貌しつつあった頃に、ウォーレン・バフェット氏は、取締役会の行動を先導すべきは、(処理装置にすぎない)ロボットではなく、原則と思考であるべきだと説いていた。

上記に関わらず、技術推進への原動力は、まさに人間が持つ類まれなる才能の核となる性質に内在するがために、テクノロジーには障壁がない。ゆえに、市場にはすでに、取締役会への参画を目的としたAI技術製品が提供されている。人は「ロボット取締役」という概念を想定できるのであろうか。現行の会社関連法は、取締役は自然人もしくは法人である必要があり、法人の場合は自然人によって法人が代表されなければならないと定めている。同様に、被扶養者である未成年、制限行為能力者やその他のケースの取締役就任を禁じているが、常に自然人を念頭に置いている。立法者が当該条文を起草した際、ロボットが取締役の職務を遂行する可能性を想定していたとは考えられず、むしろ、彼らはそのような可能性の予見すらしていなかったと思われる。

株主や出資者総会における選任により正当性を得て、取締役は、会社および株主の利益を代表する受託者としての義務を負う。これまで一度も、株主総会において(自然人でも法人でもない)知的存在に対し、取締役会構成員として会社経営への参画を委任できるかどうかという問題が提起されたことはなかった。しかし、生成知能の誕生により、当該可能性を検討せざるを得なくなっている。

しかし、これまでの議論によると、現時点でロボットは、取締役会に組込み可能なサイバー・アドバイザー(顧問)という技術要素としてのみ考慮すべきであろう。取締役会が審議や投票においてロボットのサポートに依拠することは問題ないが、(取締役であるかどうかを問わず)ロボットが、弁護士資格者であるべき取締役会書記役や法律顧問の職務を名目上であるとしても担うことはできないと考える。「名目上」と表現したのは、純粋な機能的観点においては、ロボットアシスタントの存在は、取締役会における複雑な商業、法律問題の議論に必要な情報機能を果たすことが可能で、事実、一部の大企業では既にその役割を果たしているためである。ある意味、道徳的な偏見や自己利益を(未だ)持たないために、本知的主体は取締役会に招待された独立した「サイバー取締役顧問」と看做すのが良いと考える。つまり、自身の特定の利益や特異性、共感や反感といったものに左右されず、事前提供情報に基づき分析を行い、回答及び意見を提供する主体であると言える。しかし、当該主体は、自然人に対し大きな影響を与える。

別の留意点としては、サイバー取締役顧問の意見、回答、もしくは推奨を、この顧問役と同じロボットによって作成される議事録に記録すべきかどうかがある。ロボットの使用を取締役会構成員の意思決定支援に限定する場合、ロボットの発言は、取締役会構成員の誰かまたは議長がこの表明に沿う決定をした際にのみ記録されるべきである。同様に、取締役会決議がロボットの意見に基づいている場合(これは「一致した」場合とは異なる)にのみ記録されるべきだと考える。ロボットは無制限の記憶容量を有し、過去の決議内容を正確に記憶する。そのため取締役会経営方針の一貫性、取締役らの行動や関係性、その他意見を求められる可能性のある事柄について結論に至る能力を有す点を考慮するべきである。これらの情報は、取締役会決議から生じる財務上の責任を判断・評価する上で、同様に保険契約範囲を検証する上で極めて重要となる。人には自身の過ちや不適切な行動を、他者や状況等の他責にする傾向がある。したがって、サイバー取締役顧問に対し、誤った経営判断の結果の責任転嫁を試みることが予想できる。これは、保険会社の新しいポリシーには、AIの過ちに基づく損害に対する補償を除外する規定が設けられている理由の一つである。

一方で、知的ロボットは、自己完結する独立知能体としてではなく、むしろ、存在意義を有し、より高度かつ複雑な情報宇宙内で生きる。ロボットは、未知な事項はクラウド宇宙やインターネット上のネットワークから探し出し、既知な事項は前記の宇宙に統合し、絶え間なく能力を発展させる。そのため、サイバー取締役顧問の守秘義務を問題視することの合法性といった、セキュリティ上の問題を検討せざるを得ない。現在のテクノロジー水準でコンピュータシステムの堅牢性を主張するのはいかにも未熟であると思われる。つまり、当該ロボットは(直接的もしくは間接的に)広大なデジタル世界に存在し、絶対的な機密情報を保持する。そのために、第三者による不正な情報抽出の対象となる可能性がある。会社にとって、壊滅的な結果をもたらす可能性や事態の重要性を考慮すると、当該可能性を過小評価すべきではないと思われる。もしそのような抽出が実行された場合、責任は誰が負うのか。当然ながら、今日法的権利を有さず、権利義務対象ではないロボットとはならない。しかし、ロボット提供者もしくは利用者のいずれかが、あるいは両者が連帯責任を負うべきなのかについては、合理的な疑問が残る。

取締役会へのサイバー取締役顧問の導入方法についても、検討を要する。ロボットが全てを聞きとり記憶する存在、且つ決して脆弱ではないことを考慮すると、多数決による決定が論理的であるように思われる。導入には、特別多数決、あるいは全会一致が必要とできるか? それは可能であるだけでなく、必要不可欠であるというのが当職の見解である。取締役らの業務負担の軽減、質問への回答時間の短縮が予想されることから、ロボットは単なる補助的ツールではなく、取締役会運営における習慣的かつ不可欠な要素となろう。したがって、サイバー取締役顧問の意見に基づく決議に反対をする取締役は、本決議の責任から免除されるべきであり、特にその意見が取締役会書記役等の資格者の意見と相反する場合においてはなおさらであると考える。同様に、クラウドサービスプロバイダーに対するサイバー攻撃により機密情報が漏洩あるいは拡散した場合、特に、プロバイダー自身の意図的かつ秘密裏のデータ送信についても、責任を免除されるべきである。

サイバー取締役顧問は、その意見の正確性、正誤性に関わらず、取締役会において非常に有用な実務的役割を果たすことができるが、人としての判断に基づく妥当性や適切性の分析は、取締役の責務であることに留意が必要である。取締役に求められる忠実義務及び善管注意義務についても言及する。サイバー取締役顧問の意見・助言作成時に忠実義務の要素を盛り込むことを要求する、あるいは、合理的に期待することは困難に思われる。そして善管注意義務についても、業務遂行時の人間と機械間の相互補完性が高まり、同様に、技術へのアクセスの容易性と、享受し得るメリットの増大を考慮すると、むしろサイバー取締役顧問を活用することよりも、しないこと自体が怠慢の兆候とみなされるべきでないだろうか。以上のことから、サイバー取締役顧問の意見や助言は、道徳的・倫理的な理由だけでなく、ロボットが質問の解釈に基づいて回答するが、不適切な質問表現であったために回答を間違えることが日常的に起こっているという事実からも、人間の判断という拡大鏡を使用した上で精製されなければならないことがわかる。同様に、ロボットは、主張に含まれる皮肉や嫌味、ブラックユーモアを解する人間の感性を持ち合わせていないため、ロボットの言葉の真の意味での理解力の欠如ゆえに、完全に誤った結果に翻訳されることになる。人的要素は、継続して必要不可欠であると言える。

最後に1考察を。人の行動や社会的関係性は、数世紀にわたって、技術進歩の程度と速度に応じて変化してきた。生体と機械の共生を目指すサイバネティクスによって変革が推進される現代においては、数十年前までは単に無機質であった人と機械の関係が、より緊密に、こういう表現が許されるのであれば「表裏一体」な統合形態を獲得していくことはすでに明白である。取締役会へのサイバー取締役顧問導入は、この一例である。現在、技術開発を阻んでいるいくつかの障害を克服し、立法者が現実を受容し、法制度に組み込む以外に選択肢がないと判断した時、今日は、単なるサイバー・アドバイザーであるロボットは、近い将来、おそらく(独立社外取締役、または任命された)正式な取締役会役員として参画することになるであろう。

 

 

Eduardo Vilá

ヴィラ法律事務所

 

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2026年4月30日