2023年2月28日付にて、法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)は、セビージャ商業登記所の登記官が発行した、ある会社の増資および定款の変更決議にかかる公正証書の登記を拒否した判断に対する異議申し立てに関する決定を示した。
スペイン法人Tyrelastic Ruedas Industriales, S.L.(以下、「本件会社」という。)は、2022年10月5日付にて、準備金の組入れを伴う増資及び、定款の該当条項の変更に関する会社の議事録を公示した公正証書を作成した。
本稿の理解のために、増資決定のベースとなった監査済みの貸借対照表において、純資産は
(i) 公正証書上の資本金額39,000ユーロ
(ii) その他の準備金87,605.04ユーロ
(iii) 過年度業績13,811.64ユーロ
(iv) 損失68,477.74ユーロに振り分けられていたことに言及する。上記金額の合計は、71,938.94ユーロであった。
登記官は、増資実行には準備金が不十分であるという理由で、増資決議の登記を拒否した。当該観点に関し、会社に準備金の引出しを可能とするためには、はじめに、準備金を損失の相殺に充当し、その後の余剰純資産が増資の実行を許すかを検討する必要があると、登記官は説明した。
本件会社は、今回の登記拒否を不服とし、以下の理由で、公文書管理局に異議を申立てた。
(i) 増資決議の公示時に使用された貸借対照表は、セビージャ商業登記所に任命された専門家によって正式に監査され、その結果、不備は認められず、良好な報告書が発行されている。
(ii)本件の貸借対照表の記載は、会計年度ベースではなく、4ヶ月間の結果であったことについて。貸借対照表において損失を示す場合、特に会計年度の1年間ではなく、特定の期間について損失がある場合に、スペイン資本会社法は、準備金を増資に組入れすることを明確に禁止する規定はない。
(iii)当該決議は、本件会社の資本金に関する原則を尊重し、株主、及び第三者の保護を目的とするものであること。また、当該決議は、本件会社の資産を損なうものではない。
公文書管理局は、本件では、中間決算で損失が計上されている貸借対照表においては、純資産が登記資本額を超過しているため、スペイン資本会社法第273.2条に基づき、法的に要求される相殺を提供できないとして、この点が準備金組入れによる増資決議の登記の可否の問題を構成することを確認し、異議申立ての判断をした。
当該観点について、公文書管理局は、当該決議が有効に採択されるためには、増資後、簿価純資産額が、少なくとも増資額と同額だけ資本金額を上回っていることを証明する必要がある。また、準備金の自由な処分が可能であることが不可欠な要件であると過去の決定でも述べてきている。この目的における自由な処分とは、増資による株主への配分を含む、あらゆる目的にも適用できる自由であると理解しなければならない(資本会社法第273条の拡大解釈であると言えよう)。さらに、公文書管理局は、利用可能性の要件として、事前の損失相殺を定めている。
上記に従って、準備金による損失相殺後、準備金を組入れる増資の実行のための法的要件を満たさない場合、その当該準備金は処分対象となり得ないと理解される。
以上の理由から、公文書管理局は会社資本の原則によりこの問題を解決し、本件会社の申立てを棄却した。すなわち、資産や特定の準備金によるカバレッジを享受しない株式/出資持分の創出は不可能である、という決定を下した。これは、会社の資産に、必要資金が有効に存在し、株式資本に転換可能であることの適切な証明の必要性を意味する。
マルティネス・コスタ・ディエゴ (Diego Martínez-Costa)
ヴィラ法律事務所
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2023年4月21日