資本会社法第32条第1項に従いスペイン商業登記所に登記されている会社については、その事業年度内に、立法者によって定められた会計義務を履行する4つの主要な日が存在する。

スペイン商法第25条は、会社経営者に特定の会計義務を課しており、その中の一つが「年次計算書類を管理すること」である。本稿では、当該義務内容、及び義務履行の期日について精査する。

前述のスペイン商法は第三編内で「会社経営者の会計について」述べており、特に第2部第1章は年次計算書類関係の規則を詳述する。具体的には、第34条第1項は「経営者は事業年度末に、会社の年次計算書類を作成しなければならない」と規定する。先の一般条項は資本会社法第253条において「会社の取締役は、事業年度終了後3ヶ月以内に、計算書類を作成することが義務付けられている」と具現化されている。したがって多くの場合、会社の取締役は、3月31日までに年次計算書類を作成しなければならない。「多くの場合」としたのは、会社によっては資本会社法第26条で定めるように12月31日を事業年度終了日とするのではなく、他の日を事業年度終了日としている場合もあるからである。いずれにせよ、事業年度については定款に記載されなければならない。

年次計算書類に含まれなければならない文書を、以下略記する。

  • 貸借対照表(商法第35条第1項及び第36条第1項)資産の部、負債の部、資本の部を分けて表示する。
  • 損益計算書(商法第35条第2項及び第36条第2項)一年間の純利益を、収益と費用に厳密に分けて表示する。資本会社法第258条規定を満たしている場合、簡易版の損益計算書の作成が可能。
  • 株主資本等変動計算書(商法第35条第3項及び第36条第3項)
  • キャッシュフロー計算書(商法第35条第4項)

2年連続の事業年度のそれぞれの決算日に、後に述べる要件のうち少なくとも2つ以上を満たしている場合のみ、資本会社法第257条を適用し、簡易版の貸借対照表及び株主資本等変動計算書の作成が可能である。以下に要件を記す。

  1. 純資産が400万ユーロを超過しない
  2. 年間売上高の純額が800万ユーロを超過しない
  3. 会計年度中の平均従業員数が50人以下

貸借対照表を簡易版で作成できる場合、株主資本等変動計算書及びキャッシュフロー計算書作成は義務付けられない。

  • 個別注記表(商法35条第5項および資本会社法第259条)は、年次計算書類を構成する他の文書に記載されている情報を補足、拡張、コメントする。

第二に、資本会社法第268条では、年次計算書類が会社の株式、財務状況および業績について公正な見解を示しているかを検証するために、会計監査の必要性について規定する。しかし資本会社法第263条第2項によれば「2年連続の会計年度中に、それぞれの決算日に、以下の要件の少なくとも2つを満たす企業」は監査報告書作成を要さない。以下に要件を記す。

a) 資産総額が285万ユーロを超過しない

b) 年間売上高の純額が570万ユーロを超過しない

c) 会計年度中の平均従業員数が50人以下

いずれにせよ、該当する場合は、監査人は少なくとも1ヶ月以内の監査報告書提出を義務付けられている。資本会社法第270条第1項によると1か月という期間は「取締役によって署名された計算書類が監査人に提出された日から」カウントが始まる。したがって原則として、監査報告書の最終提出期限日は430となる。

最後に、直近事業年度の会計計算書類の承認を目的とした、定時株主総会を毎年事業年度が始まって6ヶ月以内に開催しなければならない。通常は6月30日までとなる。しかしながら、資本会社法第2部第164条は「例え定時株主総会が規定の期間以外に招集されたとしても、その総会は有効である」と規定している。

計算書類の承認後、会社の取締役達は1ヶ月以内に本店所在地を管轄する商業登記所に、承認された計算書類を提出しなければならない(資本会社法第279条)。要するに、計算書類は7月31日までに登記所に提出されなければならないことを意味する。

最後に、スペイン資本会社法第282条第1項により、会社の運営組織(取締役又は取締役会)が計算書類の法定期限内の提出義務を履行しなかった場合には、当該不履行が是正されるまでは当該会社に関するいかなる登記も受理がされないことは十分に注意されたい。加えて、同法第283条によれば、当該不履行により会社に1,200ユーロから60,000ユーロの罰金を科される可能性が生じる。 さらに、倒産法第172条第2項第1号の定めにより、計算書類の提出義務の不履行は、会社が倒産手続きに入った際に倒産に陥った原因が会社自身にあるかどうかの判断がされる場合の参照情報となる。この場合、判決において、計算書類の提出義務を怠ったことを理由に、取締役が倒産の原因の一端を担う者と評価される。

 

 

ロンセル・アナ (Ana Roncel)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年6月16日