2021年7月9日欧州委員会は、2010年に発効したEU規則第330/2010号に代わる、垂直的制限に関する一括適用免除に関する規則案と対応するガイドライン(EU通知 C 359/17案件)を通過させた。

過去10年間に電子商取引、特にオンラインプラットフォームを基盤とする国境を越えた販売モデルの著しい進化により、垂直的協定に関する法的枠組みの適応が予見されるようになった。オンライン上の販売においては、独占的・選択的販売システムの維持が困難であることは明白であり、垂直的協定に内在する販売制限の事実上の希釈化をもたらし、実際にこれを目の当たりにしていた。高級品や業務用商品の市場において、サプライヤーとディストリビューター(販売者)の間に著しい高い緊張関係を生み出し、結果として特別な影響がある。というのも、ディストリビューターのある領域における排他的かつ独占的な販売権は、仲介業者や再販業者の役割を担っており、オンラインプラットフォームを通じての独占的製品販売によって、販売に影響し、売上高減少につながると考えるからである。

EU規則の性質上、発効後、当該規則はEU加盟国市民および商業団体に直接影響を及ぼすことから、選択的流通契約およびオンライン販売にどのような影響を及ぼすかを知ることは、新しい法的枠組みに契約を適合させるために重要である。 

現行規則と同様に、今回の規則案も、垂直的協定の法的制限を定めている。垂直的協定とは、生産・流通ラインの異なる段階で事業を行う2社以上の事業者間の協調的行為と理解され、当事者が商品またはサービスを購入・販売・再販する際の条件を定めるものであることに留意されたい。当該協定は、欧州連合の機能に関する条約 第101条第1項の適用範囲に入る場合、垂直的制限または競争制限として理解されるものとされる。

規則は、同条に抵触する制限的協定について、一定の要件を満たす場合に適用される免除を定めている。一般的に、サプライヤーの本拠地において契約対象商品・サービス市場シェアの30%を超えず、同商品・サービスディストリビューターの本拠地におけるシェアが市場の30%を超えない場合、免除が適用されるものとされている。

a) 選択的流通契約における制限条項

選択的流通システムとは、サプライヤーが特定の基準に基づいて選択されたディストリビューターのみに商品・サービスを提供し、ディストリビューターは契約両当事者によって定義された領域において無許可のディストリビューターに商品・サービスを提供しないことを約束するシステムである。

今回の規則案によれば、契約ディストリビューターの顧客がサプライヤーの認可を受けていない第三者に商品を販売することを禁止する契約条項が認められることになる。このようなケースに一括適用免除を適用する際の主な障害は、サプライヤーが選択的流通システムの性質を実際に満たしていることを正当化できるかどうかにある。なぜなら、正当化できない場合、当該条項は、規則案の第2条に規定されている適用除外対象に含まれないことになるからである。

他方、サプライヤーが製品・サービスの属性として希望する高度かつ独占的な基準を保証するために、自らの品質基準を定めることが認められる。特にネット販売に関する限り、こうした基準を確立のための余地が拡大される。ここで重要なのは、現在施行中のEU規則及びガイドラインに定められた、品質基準がグローバルに同等でなければならないという既存条件が撤廃されることである。

競合品の取扱い。選択的流通システムの構成員に、特定の競合サプライヤーのブランドを販売しないようにさせる直接的または間接的な義務は、規則に規定されている免除の恩恵を受けないことに留意する必要がある。ガイドライン案では、理由として、同じ選択的流通拠点を利用する多数のサプライヤーが、他の1つ以上の特定の競争者がその拠点を利用して製品を流通させることを妨げるためとしている。

独占的流通システムのディストリビューターに対しては、サプライヤーが別の地域で販売権を付与する特定の第三者や、サプライヤーにより予約されている顧客グループ、もしくは1人または限られた数の購入者に関連してサプライヤーが指定した第三者対して、積極的な販売を制限することができる。

選択的流通システムにて管理される地域に所在する非正規のディストリビューターに対する排他的流通システムメンバーによる能動的または受動的な販売もまた、禁止される場合がある。この種の販売は、卸売レベルで事業を行っている最終消費者に対しても禁止される場合がある。

選択的流通システムメンバーの事業所地域を制限することができる。

同様に、サプライヤーと同種の商品製造に使用することを意図するクライアントに対しては、商品に組込む目的で積極的または消極的に部品を販売する権限に対する制限も有効とされる。

一方で、以下のものは適用除外とされ、無効となる。

(i) 選択的流通システムのメンバー間における(能動的又は受動的)相互供給の制限。

(ii) 選択的流通システムのメンバーの一員である小売業者の最終消費者に対する積極的または消極的な販売の制限。ただし、選択的ディストリビューターが、サプライヤー若しくは他の地域における独占的販売権を有する当事者と契約を締結した第三者、又はサプライヤーにより予約されている顧客グループ若しくはサプライヤーが一人の購入者若しくは購入グループに対して積極的に販売を行う場合は、例外とされる。

  1. b) 選択的販売契約及びプラットフォーム上のネット販売

選択的流通契約において、この分野の制限条項が免除の恩恵を受ける可能性は、釣合いを考慮に入れて分析されなければならない。規則ガイドライン案では、制限条項は選択的流通システムが追求する目的を越えてはならないとしている。この点から、高級品のサプライヤーが、商品販売のために第三者のオンラインプラットフォームを利用することを販売認可業者に禁止することは、適切であると考えられる(すなわち、これを認めること)と宣言していますが、サプライヤーは、以下のことを認める必要がある。

  • 第三者のインターネット・プラットフォームを通じての広告活動。
  • 検索エンジンの利用

さらには、選択的流通システムを適用するサプライヤーは、ディストリビューターまたはクライアントが商品およびサービスをネット上にての販売妨害を意図しない限り、その販売認可業者に実店舗販売に課すものと同一ではないネット販売のための基準を課すことができる。すなわち、ネット上で商品購入するユーザーのために、以下のようなサービスの質を保証するための一定の要件を設けることができる。

  • オンライン・アフターサービスサービスの構築。
  • 返品費用の負担義務。
  • 安全な決済システムの使用義務

しかしながら、独自のウェブサイトを管理し、第三者のプラットフォームや検索エンジンを介して広告を出すことができるディストリビューターには、これらの制限は影響を与ない。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2022年3月25日