消費者金融契約は権利の濫用からクライアントを守るため厳格な規制の対象になっている。しかし、全てが法令に明記されているわけではない。欧州連合司法裁判所(以下、CJEU ) 2025年5月8日付判決では未払いに関する当事者間の明示的な合意の重要性を確認した。
本件では、消費者2名がスペイン銀行Abanca社と支払い遅延時の早期償還条項の含まれた個人間融資契約を締結した。これは、一定割合(契約状態に応じて3%または7%)の債務不履行が発生した場合、貸し手が即時に残額の一括返済を請求できるという内容である。ただし、当該条項は、債務者が未払い金額を清算するために催告日から1ヶ月の期限を設けていた。Abanca社は早期償還を宣言し、未払金の回収を求めて訴訟を提起した。これに対し、ラ・コルーニャ第8民事裁判所は、当該条項が不当条項に該当する可能性があるとして、訴訟手続きを中断し、CJEUに解釈を求めた。
ラコルーニャの裁判所は、欧州の判例法に従い、これらの条項が権利濫用的なものであるかどうかを判断する際には、消費者が早期償還を回避するための法的手段が存在するか否かを考慮しなければならないと指摘した。問題とされていたのは、住宅ローンとは異なり、スペイン国内法に個人向け融資契約における早期償還を回避する立法上の救済措置が存在しない点である。したがって、契約条項による1か月の猶予期間が回避するのに充分な救済措置として認められるかどうかが争点となった。
本件における重要な論点は、欧州経済共同体指令第93/13/EEC号が、善意に反して消費者に不利益をもたらし、当事者間の権利義務に関する重大な不均衡を生じさせる条項を禁止している点にある。伝統的に、裁判官は、期限の利益喪失に関する条項が、消費者がその適用を回避するための有効な手段を包含しているかどうかを審査すべきであるとされている。スペインにおいては個人向け融資契約に関して明示的な法的規定が存在しないため、この回避手段が法律によって定められる必要があるのか、それとも契約内に含まれていれば充分なのかが問題とされていた。
CJEUの立場
この点について、CJEUは(訴訟C-6/24及びC-231/24における)2025年5月8日付判決において、「当該条項が不当条項に該当するか否かは、消費者がその適用を回避するための適切かつ有効な手段を有しているかどうか」を、国内裁判所が個別に判断すべきであると判示した。
要するに、広範な法的規制の対象とならない契約においても、期限の利益喪失条項の導入は可能であるということである。ただしその場合には、契約上に消費者が条項の適用を回避するための救済手段が明確に規定されている必要がある。一方で、金融機関が従うべき救済手段が必ずしも国内法に明記されている必要はないとも判断された。
さらに、CJEUは、この救済措置が適切であり効果的であるか否かの審査権は国内裁判所にあるとしているものの、国内法において類似の仕組み(たとえば、住宅ローン契約のものなど)が存在する場合、それが1ヶ月の猶予期間の適切性を評価する上で`「特に重要な」要素であると強調した。
消費者と金融機関への実務上の影響
本件におけるCJEU の判断は、早期償還条項に対する救済手段の解釈に変化をもたらすものであり、契約当事者間の明示的な合意に一層の重みを与える結果となった。
消費者にとっては、契約条項において債務全額の弁済について合理的な猶予期間が設けられている場合、その期間を活用して早期償還条項の効力を回避することが可能となる。
実務上は、債権者から支払催告書を受け、1か月の猶予期間が与えられている場合は、その期間内に資金を調達し、債務不履行による契約の終了を回避する機会が与えられたということになる。
すなわち、この猶予期間が債務不履行の是正を可能とするために充分な期間なのかが審査要素となる。
金融機関においては、期限の利益喪失の条項が存在することで直ちに無効になるというわけではなく、適切な救済措置が確保されていれば効力が認められるということを意味する。すなわち、金融機関は定められた要件を遵守する限り、早期償還条項を引き続き利用できるということである。さらに、本判決は住宅ローンに関する法制度との調和を取り、契約条項が従来は明文の法令によって規定されるべきだった保証(免責期間など)を契約上の合意によって再現できることを証明した。
この判決は判断基準を明らかにしたということである。要約するおt、債務者が支払いを延滞した場合、債務を清算するための充分な期間(例えば1か月など)を設けていれば、早期償還条項が不当とはみなされないとしている。
この明確さは金融業界における法的安定性を促進し、金融機関やクライアントは今後契約書を分析する際確認すべき内容を理解していることになる。そして救済措置として確保された早期償還条項が公正で適切な期間なのかは国内裁判所が審査する。本判決が、EU指令の解釈を契約実務に合わせることによって、特定の法律の不在から生じる法的安定性の欠如を回避し、クレジット契約が一貫して解釈されることに貢献した。
アレックス・サントラリア(Alex Santolaria)
ヴィラ法律事務所
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2025年5月16日