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EUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」は、従来のエコデザイン指令を大幅に刷新し、2024年7月18日に発効された。​

この規則は適用される製品の幅が広く、かつ、規則及びその委任立法に従うことが製品の上市にあたっての要件となることから、域内外を問わず、影響が及ぶ事業者が多いと見られるため、その概要を解説する。

I. 適用範囲

ESPRは、市場に流通させられるか、または使用に供されるすべての物理的製品に適用される。これには、部品及び中間製品が含まれる。ただし、ESPRは、(a)食品、(b)飼料、(c)医薬品、(d)獣医用医薬品、(e)生きた植物、動物及び微生物、(f)ヒト由来の製品、(g)植物又は動物の将来の繁殖に直接関係する製品、(h)車両(ESPR第1条第2項)。

従来の指令では、エネルギー関連製品に限定されていたが、ESPRでは、上記例外を除く、ほぼすべての物理的製品が対象となっている点に留意を要する。

II. エコデザイン要件

製品は、エコデザイン要件(第3条第1項)に適合する場合に限り、市場に供給または使用に供することができる。

エコデザイン要件は、特定の製品特性の改善に適切である場合、次のいずれかまたは両方を包含するものとする(第5条第9項):

(a) 性能要件

(b) 情報要件

1) 製品特性

製品特性は、次のとおりとする(第5条第1項)。

(a)耐久性、 (b)信頼性、(c)再利用可能性、 (d)アップグレードの可能性、 (e)修理可能性、 (f)保守及び改修の可能性、 (g)製品中の懸念物質の存在、 (h)エネルギー使用及びエネルギー効率 (i)水使用及び水資源効率 (j)資源使用及び資源効率、(k)リサイクル材の含有率、(l)再製造の可能性、 (m)リサイクル可能性、(n)製品からの材料回収の可能性、(o)カーボンフットプリント及び環境フットプリントを含む製品の環境負荷影響、(p)廃棄物発生量の予想。

2) 性能要件

製品は、製品特性に関連する性能要件に適合しなければならない(第6.1条)。

性能要件は、ESPRの別紙Iで言及される関連する製品パラメーターに基づいて設定されるものとする(6.2)。例えば、修理・維持の容易性、アップグレードの容易性、再利用、再製造、再生、製品のライフサイクルの1つまたは複数の段階におけるエネルギー、水、その他の資源の使用または消費、マイクロプラスチックおよびナノプラスチックの放出は、ESPRの別紙Iに含まれる。

3) 情報要件

製品は、製品特性に関する情報要件に準拠しなければならない(第7.1条)。

情報要件には、少なくともデジタル製品パスポートに関する要件が含まれる(第7.2条)。

デジタル製品パスポートに含めるべきデータまたは情報は、第9.2条および附属書IIIに規定されている。例えば、一意の製品識別子、グローバル貿易識別番号、適合証明書、ユーザーマニュアル、警告または安全情報など。

経済事業者は、製品を市場に供給する際、デジタル製品パスポートサービスプロバイダーを通じてデジタル製品パスポートのバックアップコピーを提供しなければならない(第10.4条)。

4) 委任規則の制定権限

欧州委員会は、ESPRを補完するため、エコデザイン要件を設定する委任規則を制定する権限を有する(第4.1条、6.1条および7.1条)。

委任行為の最低限の内容は、ESPRの第8条に規定されており、対象となる製品群の定義、対象製品群に対するエコデザイン要件、使用される試験、測定または計算の基準または方法、適合性の確認に必要な情報の提供方法、形式、順序、 加盟国が、委任行為の効力発生日においてその領土内で効力を有する国内措置に適合する製品の市場への供給または使用の開始を認める移行期間の期間、および委任行為の見直しを行う日付。

III. 未販売消費財の廃棄

事業者は、未販売消費財の廃棄を必要としないよう、合理的に期待できる必要な措置を講じなければならない(第23条)。

上記に加え、衣料品、衣料品付属品および靴製品については、2026年7月19日から、未販売の消費財の廃棄が禁止される。

この措置は、2030年7月19日から中規模企業に適用される。ただし、小規模企業および零細企業には適用されない(第25条第1項)。

IV. 今後の注目すべきタイムライン

1) 作業計画

委員会は、関連する準備文書(以下「作業計画」という)と共に、作業計画を採択し、公開しなければならない。作業計画には、エコデザイン要件の設定において優先的に取り扱う製品群のリストおよびその設定の推定スケジュールを定めるものとする(第18条第3項)。

最初の作業計画は、2025419までに採択され、委員会は次の製品群を優先順位付けするものとする(第18条5項):

(a)鉄鋼、(b)アルミニウム、(c)繊維製品(特に衣類および靴)、(d)家具(マットレスを含む)、(e)タイヤ、(f)洗剤、(g)塗料、 (h)潤滑剤、(i)化学品、(j)この規則に基づき初めてエコデザイン要件が設定される製品または指令2009/125/ECに基づき採択された既存措置の見直し対象となるエネルギー関連製品;および(k)情報通信技術製品その他の電子機器。

最初のESPRおよびエネルギーラベル付け作業計画の採択および公表は、2025年4月16日に実施された。

この作業計画には、各製品ごとの採択の目安となるスケジュールが含まれている。

2) 最初の委任行為

最初の委任行為は、2025719以前に効力を生じない(第4条第7項)。

ESPRの適用範囲内の製品を扱う事業者、特に作業計画に掲げられた製品を扱う事業者は、委任規則の今後の動向を注意深く動向を確認する必要がある。

 

 

南智士 (Satoshi Minami)

ヴィラ法律事務所

 

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2025年4月17日