ヨーロッパ統一特許制度(EU特許)はヨーロッパ特許に関する条約に署名したEU加盟国における発明の保護を簡易化する新しい制度である。その主たる特徴は、1つの特許でEU全域において統一した保護が受けられる点、また当該案件について独占管轄を有する特別裁判所が設置される点にある。

「ヨーロッパ特許」と呼ばれる現行のシステムは「EU特許」とは異なるものであり、各国の法令によって定められた保護を保証するものである。したがって、統一の特許権を与えるものではなく、ヨーロッパ特許事務所(OEP)を通じて特許申請をまとめて行い、特許権の保護を適用してほしい国を個別に指定することが可能となるに留まる。本制度が抱える多くの問題のうち、言語の壁について特筆する。全EU加盟国において特許の保護を受けるには、特許の内容をすべての国の公用語に翻訳しなければならず、費用がかさむことになる。この言語の問題は、EU特許では英語、ドイツ語またはフランス語の公式言語を使用すれば事後に翻訳の必要が生じることなく、統一的な保護を受けることができることになる。

しかし、この言語の問題こそ、スペイン(及びイタリア)が自国の公用語が公式言語から除外されたことは差別であるとして、今日までEU特許制度に反対する理由である。この点、スペインは(i) EU機能条約第118条は2012年EU規則第1257号を承認する法的根拠にはならないこと、及び(ii)2012年EU規則第1260号に関して言語に基づく差別があることを主張し、欧州裁判所に対してそれぞれ異議申立てを行った。

しかしながら、2015年5月5日付判決を通じて、欧州裁判所はスペインのいずれの申立てについても却下した。判決では、2012年EU規則第1257号について、EU特許を許容するための要件を設ける目的のために機能するものではないことを認め、かつ、いかなる場合においても、統一保護は参加国によって特許による保護が異なることを避けるために適切であるとする一方で、当該規則によって定められた言語制度は、EU特許申請者の利益と他の会社の利益の間の必要なバランスを保ち、EU特許へのアクセスをより容易かつ費用を抑えるものであると示した。

EU特許システムに関連して、スペインは新たな逆境に直面しており、イタリアとともに本件条約案に参加しない数少ない国であるという状態が継続している。

現状、スペインは、署名国がEU特許施行のための特許統一裁判所にかかる合意書の批准を行うのを待っている状態である。当該施行には13の条約批准国及びドイツ、イギリス及びフランスの参加が必要であり、2016年か2017年の施行が予定されている。

 

 

ヴィラ法律事務所

 

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2015年5月15日