掲題の答えはイエスである。ネットユーザーがネットで検索を行う際、クリックすれば広告主のウェブページに転送する商業目的のメッセージを画面表示させるべく、競合他社の商標を検索エンジン内キーワードとして使用することに関し、欧州司法裁判所ならびにスペイン最高裁の判例見解に見られる指針が示す許容範囲について、以下に簡潔に触れる。
まず、インターネットの検索広告システムがいかなるものかを定義しておきたい。
- ネットユーザーは無償かつ自由に検索エンジンにキーワードを入力することにより、通称「自然検索(オーガニックサーチ)」の結果を得る。これらは検索エンジンを運営する企業が、あらかじめ各キーワードに関連付けて選択しておいたものである
- 同時に検索エンジンは、広告表示システム(グーグルの場合「アドワーズ(AdWords)」と呼ばれる)を稼働させ、入力されたキーワードに応じて自然検索の結果と併せて広告を表示させる。これらは広告主のwebリンクと共に画面に現れる広告であり、自然検索の検索結果の上方に表示される。
ここで、広告主に提供される検索エンジン内のキーワードが、登録商標やよく知られた有名な商標と同一である場合、何が起きるのだろうか?
この問いは、欧州司法裁判所の様々な判決で取り扱われており、スペイン最高裁の2016年2月26日の判決(Maherlo Ibérica, S.L.社‐Charlet, S.A.M.社間の裁判)もその一つである。当該事件は欧州司法裁判所における2010年3月23日判決(グーグル・フランス社-ルイ・ヴィトン社、グーグル・フランス社-ヴィアティクム社、グーグル・フランス社-フランス国立人間関係研究センター)、2011年7月12日判決(ロレアル社-イーベイ・インターナショナル社)、及び2011年9月22日判決(インターフローラ inc.社-マークス&スペンサー社)に準拠している。
欧州司法裁判所並びにスペイン最高裁の判例によれば、競合他社の商標を表す要素と同一の記号をキーワードとしたグーグル社の検索広告サービスと契約するということは、商品もしくはサービスの商流外における他社の商標利用に該当するため、正規ブランド品であることの明確化や広告、あるいは投資といった商標の機能を妨げることのない非典型的な使用とされる。
このため、他社の登録商標を検索エンジン内キーワードとして使用し、広告リンクを画面表示させることは、下記の要件を満足していれば可能となる。
(i) 商標の使用が、正規ブランド品を示す役割や経済的意義を毀損しないこと。つまり、一般的な知識を有する消費者が一定の注意を払っていれば、広告表示された商品もしくはサービスがその商標を保有する企業やその関連企業からのものか、あるいは第三者からのものかが判別可能であること。
(ii) 平均的なインターネットユーザーにとって、広告表示される商品もしくはサービスが商標を保有する企業やその関連企業からのものではないことが明白であること。つまり、その業界で競合する他の企業によって類似の商品が生産、販売されていることをユーザーが確実に把握できること。これに該当しない場合は、どのような条件で特定のブランドの商品が公式ウェブページ経由とは異なる形態で販売されているかを記載すること。
上記に基づき、第三者の商標が検索エンジン内キーワードとして使用される場合、その商標名は検索結果の見出しや広告の説明文、また広告を掲載するドメイン名のいずれにも表示されてはならない。
ビジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)
ヴィラ法律事務所
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2016年8月19日