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近年、EUにおいては製品の安全に関する法改正が盛んに行われている。2024年11月18日にも、製造物責任指令が制定されたばかりである。

2023年6月12日には、一般製品安全規則2023/988(以下、「規則」という。)が発行した。一般安全規則は、安全な製品のみを市場に流通させることを義務付けていた一般製品安全指令2001/95/EC(以下、「指令」という。)が置き換わるものである。この見直しは、新技術やオンライン販売に関する発展に対応するために行われた。規則の適用開始は、2024年12月13日とされている(指令第52条)。本稿では、一般製品安全指令からの重要な変更点に重点を置き、この一般安全規則内容を紹介する。

なお、指令から規則への変更については、EU整合法令の適用範囲内にある製品を対象とする市場監視の法的枠組みとの整合性を確保することや、域内で製品安全規制を一貫して適用することで、規制負担を軽減することに狙いがあったとされている。

I.- 製品に関する適用範囲

規則は、上市され、市場で取得可能に置かれた製品に適用されるとするが、EU法が製品安全に関して別途定めているものについてはそちらが適用されるとする(規則第2.1条)。

一方、人・動物用の医薬品、食品、飼料、生きている動植物等、動物由来製品、保護植物製品、輸送サービスに関する装置、航空機、骨董品は適用対象外とされている(規則第2.2条)。

II.- 域外の事業者

規則は、製造業者、認定代理人、輸入事業者、販売事業者ら(これらを総称して、「事業者」という。)に義務を課している。たとえ、製造業者が、EEAの国外に所在していたとしても、EEAの市場に製品を上市するのであれば、これら義務が適用される点には留意を要する。そして、規則の適用の範囲内の製品を上市するには、域内に事業者に該当する者がいなければならないとされている(規則第16条)。

II.- 安全製品の評価観点

従前の指令と同様、規則は、事業者に、安全な製品のみを上市しなければならないとしている(規則第5条)。

ただし、指令には規定されていなかった安全な製品であるかの評価観点が規定されるに至っている(規則 第6.1条)。それは、(a)製品の特性、(b)他の製品への影響、(c)他の製品が当該製品に与える影響(d)製品の表示、(e)製品を使用する顧客のカテゴリー、(f)製品の形状、(g)サイバーセキュリティ、(h)製品の進化、学習、予測機能である。

III.- 遠隔販売

新たに導入された義務として、遠隔販売における義務がある。

規則第4条は、オンラインその他の遠隔販売手段を通じて販売される製品は、その提供が域内の消費者を対象としている場合、市場で入手可能となったとみなす。そして、販売申出は、関連する事業者がその活動をいかなる手段によっても1又は複数の加盟国に向ける場合、域内の消費者を対象としているとみなしている。

規則第19条は、事業者がオンラインまたはその他の遠隔販売手段により製品を市場に提供する場合、当該製品の提供には、少なくとも以下の情報を明確かつ目に見えるように表示しなければならないとする。

a) 製造者の名称、登録商号または登録商標、および連絡先となる郵便および電子の住所。

b) 製造業者が欧州連合に設立されていない場合、本規則第16条(1)項または規則(EU)2019/1020第4条(1)項に定める責任者の氏名、郵便および電子メールアドレス。

c) 製品の識別を可能にする情報(製品の写真、種類、その他の製品識別子を含む)。

d) 本規則又は適用されるEU整合化法規に従って、製品または包装に貼付されるか、または添付文書に記載される警告または安全情報で、製品が市場に提供される加盟国が決定する、消費者が容易に理解できる言語によるもの。

IV.- 製品安全事故発生時の情報通知義務

規則第20.1条は、製造業者は、セーフティビジネスゲートウェイ(ウェブポータル)を通じて、市場に置かれた、又は市場に提供された製品に起因する事故が、事故を知った瞬間から不当に遅延することなく、事故が発生した加盟国の管轄当局に通知されることを確保しなければならないとする。通知には、製品の型式及び識別番号、並びに事故の状況(判明している場合)を含めなければならない。製造業者は、要請に応じて、管轄当局にその他の関連情報を通知しなければならない。

第1項の目的のため、製造業者は、個人の死亡又は個人の健康及び安全に対する重大な悪影響(恒久的又は一時的な傷害、その他の身体損傷、病気、慢性疾患を含む)をもたらした製品の使用に関連する事象を管轄当局に通知しなければならない。

輸入業者及び流通業者は、自らが市場に流通させた製品に起因する事故について知った場合、不当に遅滞することなく、その旨を製造業者に通知しなければならない。製造業者は、上記に従って通知を行うか、輸入業者又は流通業者のいずれかに通知を行うよう指示しなければならない(規則第20.3条)。

そして、製品の製造者が域内に所在しない場合、事故を知る責任者は、通知が確実に実施されるようにしなければならないとされている(規則第20.4条)。

規則の適用が迫った現段階で、対象となる製品に関与する事業者は、再度規制に従った体制を構築できているか見直すことをお勧めする。

 

 

南智士 (Satoshi Minami)

ヴィラ法律事務所

 

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2024年11月29日