本稿では、主要な仲裁機関がCOVID-19感染症パンデミックにどのように対応したかを簡単に確認し、その際に採用した措置が維持されるに至ったかどうかを検証する。
リモート又は電磁的方法による仲裁の問題は、数年前から当該分野において議論がされてきたテーマである。
2018年にクィーンメリー大学とホワイト&ケース法律事務所が行った国際仲裁改革についてのアンケートでは、回答者に、国際仲裁における5つの異なる形式の情報技術(ビデオ会議、法廷での情報技術、クラウドストレージ、人工知能(AI)及びバーチャル法廷)の使用頻度を質問した。
回答者の大半は、当事者の物理的な出席を必要としない、ビデオ会議やその他のコミュニケーション手段による審問や会議の開催を提唱した。これにより、時間と費用を大幅に節約することができるからである。他方、弁護士及び仲裁人は、証人審問や当事者の最終答弁の聴聞をビデオ会議で行うことについて消極的だった。
いずれにせよ、COVID-19の発生、そして世界規模で課せられた移動制限により、国際社会は、新たなテクノロジーを仲裁手続に導入することについて、さらなる一歩を踏み出すことを余儀なくされている。
したがって、以下の仲裁機関から発表された「ソフト・ロー(soft law)」勧告をここに取り上げることは、重要な意味を持つ(強制力を有さないが、仲裁人、弁護士、当事者にとって実務の指針として役立つはずである)。
- COVID-19パンデミックの影響緩和措置に関する国際仲裁会議所のガイダンスノート(ICC Guidance Note on Possible Measures Aimed at Mitigating the Effects of the COVID-19 Pandemic)
- 米国仲裁協会及び紛争解決国際センターのスタッフ、仲裁人、弁護士、関係者向けのバーチャル・ヒアリング実務に関するガイド(AAA-ICDR® Virtual Hearing Guide for Arbitrators and Parties)
- 香港国際仲裁センター発行バーチャル・ヒアリングのためのガイド(HKIAC Guidelines for Virtual Hearings)
- 投資紛争解決センター(ICSID)発行オンライン・ヒアリングのための簡易ガイド(Brief Guide to Online Hearings at ICSID)
- 国際仲裁におけるビデオ会議に関するソウル議定書(Seoul Protocol on Video Conferencing in International Arbitration)
スペイン国内レベルでは、マドリード仲裁裁判所(CAM)、民事・商事仲裁裁判所(CIMA)及びスペイン仲裁裁判所の国際仲裁業務が合併し、マドリード国際仲裁センター(CIAM)が設立された。当該機関はテクノロジーの更なる導入を公表し、窓口書類提出なしでのオンライン申請手続きを可能にし、利用者に選択肢を与えることで、より多くの利用アクセスが可能となった。
バルセロナ仲裁裁判所は、COVID-19に引き起こされた状況に起因する契約関係の紛争の増加予測を考慮して、迅速かつ確実な解決策を必要とする当事者(事前の仲裁合意がない場合も含め)のために、初回申請が提出日から約60日間(いわゆる「ファストトラック」)を審理期間とする、電磁的方法による迅速な手続きを開始した。
上記を鑑みると、バーチャル仲裁は定着するように思われ、時間及び費用の面で利用者に大きな利点をもたらすだろう。 仲裁手続きに関与する代理人は、いかなる場合でも、機密性を保持しつつ、平等の原則、ヒアリングの機会の保証及び反対意見の聴聞の原則を保証しながら、利用可能な新しい情報テクノロジーに継続して順応していく必要があろう。
ヴィジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)
ヴィラ法律事務所
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2020年7月24日