2020年1月8日付、スペイン最高裁判所判決。
以下に、本係争案件の事実背景を概説する。
ある二つの会社間で、土地売買予約契約を締結した。本契約書に従い、買主は契約締結時に金額の一部を支払った。その後しばらくして、予約契約で規定された条件が満たされたため、売主は買主に対し売買契約の実行を主張したが、買主は本予約契約の解約を申し入れ、売買金額の一部として支払われた金額の返還を請求した。金額の返還が実行されなかったため、買主は売主会社に対し、返還請求を裁判所に申し立て、裁判所は買主の請求を認め、売主会社に金銭の返還を促したが、売主会社の銀行口座に残高がなかったことに本件は発端する。
従って買主会社はスペイン資本会社法第367条に基づいて、売主会社は解散事由を有していたにもかかわらず解散をしなかったとして、法的義務の不履行を理由に、会社の取締役に対して訴訟をおこした。第一審判決は、原告の請求を認めたが、県裁判所判決で確定した金額は、原告の請求金額をはるかに下回る額に減額されたものだった。
請求金額と確定金額の差額を不服として、原告であった買主会社は売主会社の取締役に対し、売主の買主に対する債務と同等の金額から、前段落言及した判決により回収した金額を差し引いた別の金額の訴訟を起こした。当該申立て時には、スペイン資本会社法第241条に規定される個人の行為の責任と、付随的に同法第236条の会社の行為に関する条文に基づいた。
売主会社の取締役に対する当該第二回目訴訟に関し、第一審商業法廷は、被告である取締役達は株主に配当を行った後、役員全員を解任し、計算書類を作成する義務の履行を遵守しないまま、会社に取締役が存在しない状態としたため共同責任があるとし、原告の言い分を認める判断を示した。
しかしながら第二審では、会社の債務支払いに対する取締役の責任を認め(第二回目訴訟で請求した金額より低額)、一部の支払い責任を認めた第一回目訴訟確定判決の有効性を評価し、売主会社の取締役達の控訴を認める判決を行った。第1回目訴訟で認められず第2回目請求の根拠となった取締役の個人の行為の責任(スペイン資本会社法第241条)の追求が排除されたことにより、判決が確定した。
本件は最高裁判所に上告され、その判決は以下のように結論づけた。
- 控訴人である売主会社によって提供された全ての事実関係が、県裁判所では検証されなかったということは、重要ではない。第1回目訴訟請求除外の結果として既判力の効果が明確となったことを意味し、本件の判断の根拠として、適用可能、又は関係があると考慮された、もしくはされなかった事実は、本件請求の本質を覆すことない。
- 上告人によって提出された第1回目訴訟判決の既判力の有効性に関し、最高裁判所は、本作用は確定裁判にて請求した事項に関する判断につき、同じ当事者、相続人や後継者が後の裁判にて同一のさらなる請求を除外することにある、と言及した。その目的は、最初の手順とは異なる申立てと法的根拠により「causa petendi」(訴因)の変更を原告が行うことで、被告人の無防備状態を生み出すことを防ぐことである。他方で、確定判決では信頼できた事実や法的根拠が実はそうではなかったことにより、原告が確定判決と同様の請求を提訴することを回避することにもある。従って、原告が確定案件の請求から除外した同じ内容の請求を、異なる事実、法的根拠、または根拠に基づいて、さらなる訴訟を起こすことはできないとするスペイン訴訟法第400条規定を適用するとした。当該内容は、2018年11月13日、2017年12月13日、2012年2月6日、2011年3月21日付最高裁判所判決文において確認されている。
- 第一回目訴訟では被告の一人であった者が、第二回目訴訟においては訴訟対象ではなかったのは、資本会社法第367条に規定される取締役の責任に係る訴訟の対象者ではないため問題とはならない。
- 第二回目の訴訟は、取締役の違法行為に関する民事責任を争ったもので、会社清算義務の不履行を争った第一回目訴訟とは係争点が異なっていた。両訴訟において事実と請求の原因が一致していなかった点は、両訴訟の請求が既に第一回目訴訟にて請求されているという事実ほどは重要ではない。第二回目訴訟での請求は、第一回目訴訟での主張の一部を形成し、訴因のみが異なっていた。例え第2回目訴訟において新事実を主張していたとしても、主要かつ大部分の事実は第一回目訴訟にて既に提示がされていた。最高裁判所は、第一回目訴訟時に提示された主要事実が、第二回目においても提示されていたことを強調した。
結果として、最高裁判所判決は本件上告を、第一回目判決の既判力が作用するとして棄却した。加えて上告人に対し、訴訟費用の負担を命じた。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2020年2月7日