スペイン登記公証局は、2018年7月31日付け決定にて、ドラッグアロング(強制売却権)及び タグアロング(共同売却権)に関する定款規定の合法性に関し、有限会社の会社持分譲渡の自由に制限を課すことへの株主の自主性尊重の限界を指摘する見解を示した。
具体的には、ある会社が以下の内容のタグアロング規定を定款に含めるための定款変更登記をしようとしていた。
会社持分の50パーセント以上を保有する株主が、第三者に対しその持分の全て又は一部を譲渡しようとする場合は、他の株主もその保有する持分を、当該譲渡と同じ条件で同一の譲受人に譲渡する権利を保証する、いわゆるタグアロングを付与する。
また、ドラッグアロング規定は、会社設立より5年が経過した後に、株主又は第三者が会社持分の全部について買い取る提案をした場合、譲渡人である株主は他の株主に対し同条件で同一の譲受人に持分を譲渡することを強制することができる、としていた。
商業登記所登記官は、上記2規定の登記を以下の理由により拒否した。
- これら2規定は、持分の譲受人が他のすべての持分を取得したくない場合、もしくは他の株主が、タグアロング権を行使したくないケースを予見していない。同様に、持分譲渡を検討している株主自身が、当該譲渡を断念した場合に起こる事象に対する予見もされていない。
したがって、本件の登記却下理由は規定の違法性に基づくものではなく、特定の起こりうる事象を未然に防止するような配慮が規定起草時にかけていたことによる。
登記公証局(DGRN)は最終的に、商業登記官の決定を覆し、以下の見解に基づいて、本件のドラッグアロング(強制売却権)及び タグアロング(共同売却権)規定にかかる定款変更の登記申請を受理する決定を下した。
1) 一般的に、有限責任会社は非常に「非公開」的性質を有しているとみなすことができる。したがって、株主間の相互取引、あるいは配偶者間、株主の親族間、グループ会社間の持分譲渡以外は、会社の定款規定の要件に従って譲渡が制限される。しかしながら、いかなる場合においても定款が株式の自由譲渡について完全に認めないことはできない。定款が上記点にかかる予見をしていない場合は、補足的な性質を持つ資本会社法第107条および第108条の規定がこれを補う。
2) この点における資本会社法の補足原則を考慮すると、持分譲渡の合理的な可能性又は持分に囚われることを回避するための退社の可能性が株主に保証される場合には、株主は持分譲渡を制限する代替案を規定する権利を有すると言える。そうでなければ、民法第348条に規定される資産の取引を認める基本原則に反することとなる。
3) 定款規定による持分譲渡の制限は、上記原則に違反せず、合法的な禁止を尊重するものであり、法的に認められていると理解されるべきものである。
最終的に登記公証局は、登記官は持分の自由譲渡に関する制限を規定する定款規定の合法性を検証することはできるが、規定の細部までに入ることはない。そして、法的枠組みの中で、株主は有限責任会社の特徴である非公開性を維持するために適切であると考える措置を決定する自由を享受する、との見解を述べた。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2018年10月12日