去る9月20日、EU第一審裁判所は、Jordi Nogués, S.L.がEUIPO(欧州連合知的財産庁)に登録した図形商標「Badtoro」の登録抹消を要請したGrupo Osborne, S.A(以下「Osborne」)の異議申し立てを認めるEUIPOの判断を翻す判決を出した。

Jordi Nogués, S.L.は2010年に前述の図形商標を、テキスタイル、喫煙およびギフト用品、飲料などの分野で、EUIPOに登録した。Osborneは、自社の登録商標「Toro」、「El Toro」、およびtoro(雄牛)という言葉から連想される動物の形状で構成された図形商標と新規登録商標との間に混同する可能性があるとして、EU商標に関する理事会規則207/2009号を主張の根拠に、2011年EUIPOにJordi Nogués社の商標登録について異議を申し立てた。

EUIPOは、問題となっている商標が付与された品物の一部に同一性および類似性が認められるとして、Osborneの異議申し立てを支持した。EUIPOは実際に、前述したEU規則第8条に基づく混同の可能性を考慮した。同条は、先に登録されている商標の所有者による異議申し立てに基いて、その商標と先の商標との 同一性又は類似性及びこれらの商標により包含された商品もしくはサービスの同一性又は類似性のために、先の商標が保護されている領域において公衆の側に二つを混同する可能性が存在する場合、この場合の混同の可能性は,先の商標との関連を生じる可能性を含む場合は、出願商標は登録されないものとすると規定している。

しかしながら、EU第一審裁判所は本件事案について、以下をはじめとするいくつかの理由を示し、問題となっている二つの商標を消費者が混同する可能性が低いと判断した。

  1. 「Badtoro」商標では、表象的な要素(想像上の怒れる雄牛を描写する画像)が文字的要素の上に位置しているため、「toro」という単語は、申請された商標の二次的な位置を占める。
  2. 文字的要素は、正確には想像上の雄牛が表現するものを文字化したものである。申請された商標内における重要性とその独自性を考慮すると、動物自体ではなく、大衆が認識するのは文字的要素である可能性が高い。
  3. 問題となっている商標は両方共に「toro」という単語を含むが、その表現には多くの相違点が見受けられる。

つまり、二つの商標間の類似度は視覚的レベルでは乏しいが、音韻および概念レベルにおいては中程度である、とした。

EU第一審裁判所は、両者が商品化している商品のカテゴリーは重なっているものの、問題となっている二つの商標における全体的な類似性は、わずかな程度しか認められないと結論づけた。

商標全体を考慮したうえで文字及び表象の要素から導かれた論理によれば、一般人が前述のような二つの商標を目にしても、それらの間に関連性を確立しないと考えうるに十分であるとした。

これにより、EU第一審裁判所はEUIPOの決定を翻し、Jordi Nogués、S.L.に冒頭で述べた商品を商品化するための図形標章の登録を許可した。

しかしながら、Osborneは、本判決に不服がある場合には、2ヶ月の控訴期間内に欧州連合司法裁判所への控訴を申し立てることができる。

 

 

エステル・ウゴ (Hugo Ester)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年9月29日