ビジネスユニットの出資による資本会社の増資については、会社の組織変更でいうところの会社分割として理解すべきかという点について議論がされている。
ビジネスユニットによる出資は、金銭によらない出資として処理され、株式または出資持分と引き換えに、引受人はビジネスユニットで構成される資産を会社に注入する。ビジネスユニットは資産と負債という株主資本の要素の集団、つまり、法的な取引においてその資源のみで自主的に事業活動ができるものの集まりとして理解される。
ビジネスユニットによる出資が会社分割として理解されることを前提とすると、商事会社の組織変更に関する法(2009年法第3号)が適用されることとなり、シンプルな増資に比べるとより時間を要し、かつ、保護がされたプロセスになると考えられる。
事例: ハエン商業登記所は、ビジネスユニットでの出資により行われた合同会社の増資にかかる公正証書の登記を却下した。
登記官は、当該手続きは単なる増資でなく、法3/2009第3条に定められた会社分割、すなわち、会社の株式と引き換えに、経済活動を行う事業の一定のユニットを譲渡する取引であることを、その決定の根拠とした。加えて、分割された会社の株主が有する反対する権利保護についても配慮しなければならないと主張した。
当該公正証書を作成した公証人は上記決定に異議を申し立て、最終的に2016年7月22日法務省登記・公証局は当該異議申し立てを認め、公正証書の登記を命じる決定を発した。
その論拠は以下の通りである。
a) 最高裁判所が示した通り、ビジネスユニットによる現物出資は、出資した会社が消滅しないという点で会社分割とは異なる。さらに、資産を受け取ったのは、現物出資を受ける会社の株主でなく、現物出資を受ける会社自身であり、その結果、会社の純資産において当該ビジネスユニットの代位が生じること。(2006年1月12日及び同年3月3日付最高裁判決)
b) 登記・公証局自身が、ビジネスユニットの出資による増資にいて、たとえ出資を受ける会社がその株主資本を増大する場合であっても、増資により発行される株式を取得し、現物出資を受ける会社の株主となるのは現物出資をする会社であって、その株主ではない。したがって、全体的な承継の効果は生じず、会社分割にかかる規則の適用もされない。
c) この種の増資手続きについては、会社分割の過程に課されるような規則は存在しない。したがって、現物出資を行う会社の株主は、異議を唱える権利を有していない。
d) 登記・公証局は、現物出資を行う会社において、その株主は、現物出資として用いられるビジネスユニットが会社の重要な資産に該当する場合には、資本会社法第160条f)により株主総会の承認が必要とされていることから、それに介入することができると考える。上記の株主総会による承認は、現物出資が会社の純資産額に関連して、会社の純資産の構成変更とみなされるような規模及び性格を持ち合わせているような場合にも必要となる。
現物出資が、出資を行う会社の純資産の構成変更とみなされるような場合には、2009年法第3号により設定された最も厳しい手続きによらなければならない。しかし、登記・公証局は、株主総会において全会一致による承認で決議された場合には、この問題は当該案件には適用されず、当該出資は、シンプルな増資として扱われることを明らかにしている。
第三者保護の観点からみると、現物出資を行う会社または受け取る会社の株式資本が減少することはないというオペレーションの性質により、第三者保護の状況は何ら変わらない。また、出資する会社の債権者については、出資オペレーションは純粋に会社内部の変動という性格を有しており、債権者に影響を与えない。
従業員のポジションは、労働者憲章法第44条によって保証がされている。当該条文により、ビジネスユニットの新しい所有者は、前所有者が有していた権利及び義務を代位する。さらに、所有者の変更についてその影響を受ける従業員の代表者に対して通知をすることが義務付けられている。
最後に、他の会社へのビジネスユニットによる現物出資オペレーションの自律性という観点から、2009年法第3号の施行後、特に2014年法第27号法人税法において、会社分割とビジネスユニットの出資による増資とが区別される(第76条第3項)等、当該出資オペレーションの個別性及び識別がされることとなった。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2016年10月14日