本稿で検証される問題は、倒産会社がおそらく倒産財団債権を弁済するに足る資産を有さない結果になるだろうと予測される場合における、係属中の倒産手続きの倒産財団債権弁済の優先順位についてである。この点、倒産法第176条bisは、清算された資産から得られた金額を債権者に分配したうえ、倒産手続きは終結しなければならないとしている。
係属中の倒産手続きにおける上述の状況の有無の評価は破産管財人が行う。破産管財人は、上述のような状況を知るところとなった場合には、裁判官にその旨の宣言をしなければならない。その時点から以下の順番に従って倒産財団債権の弁済を行わなければならない。
- 直近30日間分の労働賃金にかかる債権
- その他の賃金及び補償金債権
- 日用品の供給にかかる債権
- 倒産手続きを継続するための行政手数料
- その他の倒産財団債権
しかし、倒産法第154条の定める弁済優先順位の一般規則に従えば、破産管財人は破産債権の弁済に先立って、特別優先債権に影響しない資産及び権利の差押えにより倒産財団から財団債権を差し引かなければならない。同様に、倒産法第84.3条に則り、倒産財団債権はその弁済期日までに支払われなければならない。
第176条bis第2項に定める優先順位は第154条及び第84.3条の定めるものと明らかに矛盾しているように思われるが、倒産手続きの背景と状態に応じて各ルールを適用することで当該矛盾は解消される。つまり、倒産手続きの開始決定以降は一般規定である第84.3条が適用され、財団債権はその弁済期日に従って弁済がされる。同条は、倒産手続きが普通破産手続きに移行する場合にも適用される(倒産法第154条)。しかし、債権を弁済するに足る資産を有さないだろうと予測される場合には、期限に関する原則は第176条bis第2項の定める優先順位に自動的に置きかわる。
矛盾は解消されたかのようにみえるが、財団債権の弁済期日が財団資産不足の連絡よりも前に訪れる場合や倒産法第84.3条に従って支払われるべき債権について有効に弁済がされなかった場合を検討したい。
このような特殊なケースについて、最高裁は、破産財団の資産不足にかかる連絡がされるよりも前に弁済期日を迎える破産財団債権は、倒産法第176条bis第2項が定める優先順位に従って弁済される権利を有さないとし、これは破産管財人の責任とは独立していると示した。この一般規則は、連絡が行われる前に弁済期日を迎えた倒産財団債権のみならず、連絡後に弁済期日を迎える財団債権にも適用される。したがって、資産不足の倒産財団債権を所有する債権者は、破産管財人の責任を追及することができるのみで、優先倒産財団債権の弁済がされるまで自身の債権の弁済を受けることができない(2015年6月11日最高裁判例)。
以上より、破産財団の資産が不足するような場合においては、第176条bis第2項の第1号から第4号に該当しない財団債権で資産不足にかかる連絡時点において未払いとなっているものは、優先順位が5番目まで下がると考えるのが合理的であろう。この問題は、2015年6月10日付最高裁判決で審議されている。財団の資産不足にかかる連絡がされた日が倒産財団債権の執行力を決める「前後」の判断基準となる。連絡日以降は、第176条bis第2項に定める優先順位に従うが、例外事項も規定されている。それは、倒産法第84条第3項の規定により既に弁済期日を迎えた財団債権の債権者が、資産不足の連絡がされるよりも前に財団債権の支払いにかかる倒産 紛争申立て(demanda de incidente concursal en reclamación de su crédito contra la masa )を提出し、受理された場合である。この場合、倒産法第176条bis 第2項の優先順位は適用されず、当該債権は弁済期日の一般基準に従った取り扱いがされなければならない。
これらをふまえると、倒産財団債権の名義人にとっては、資産の不足が連絡される可能性、もしくは潜在的リスクがある場合の自己防衛策として財団債権の支払いにかかる倒産紛争申立てを行うことが適切である。なぜなら、上述の直近の判決から推察できるように、財団債権者が口頭または裁判外の手続きにより支払いを求めても十分ではなく、破産を管轄する裁判所に財団債権の支払いにかかる破産紛争申立てを提出することを通じて請求がされなければならない。加えて、倒産財団債権が第176条bis第2項の優先順位規定による拘束を免れるためには、倒産法第194条に則り、前出の申立ての提出だけではなく、破産管財人による資産の不足が連絡される前に、当該申立の提出が適切に裁判所に受理されなければならない。
破産管財人の立場からすると、資産の不足を認識するだけでは弁済期日を迎えた破産債権の弁済を拒否するには不十分であり、破産を管轄する裁判官へ文書による公式な連絡が行われなければこのような拒否は成立しないと考える。バルセロナ地方裁判所における2015年9月17日の判決はこの好例といえる。(資産の不足の)状況を把握した破産管財人には「即時に」連絡する義務があることを前置きしたうえで、倒産財団債権を弁済するに足る資産を有さないことを破産管財人が把握した、もしくは予測した場合、弁済期日に従った倒産財団債権の弁済は正当とは認められないとし、倒産財団の資産が不足し、それについて公式な書面連絡が破産を担当する裁判官へ行われたことを証明する場合に限り、弁済期日を迎えた倒産財団債権の弁済を拒否することができるとした。
Eduardo Vilá
ヴィラ法律事務所
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2021年2月11日