ここ数ヶ月、実態にそぐわないのに、会社があたかも環境に配慮しているようなイメージを消費者に持たせる行為を指す「グリーンウォッシュ(Greenwhashing)」問題が、様々なニュースの一面を飾っている。直近ではShein社に対し巨額の制裁金を科したイタリアのケースや、根拠なき環境配慮を主張するあるエネルギー会社に対するフランス当局の対応は、このような問題に対する規制当局の対応がますます強硬になっていることを示している。これらは、ある特定分野における孤立、限定した事例ではなく、EU加盟国内における一般的な傾向、すなわち環境保護に対する規制強化、消費者の誤認識や不正競争防止ための客観的かつ透明で、法に基づく証拠提示の要求に応えるものであるといえよう。
グリーンウォッシュ
グリーンウォッシュは、広告や消費者保護の観点のみならず、企業のSDGs取組みやグリーン課税の分野でも重要な現象となっている。最近の調査では、大企業から中小企業まであらゆる規模の企業において、科学的、国際的側面の観点から定めた排出削減目標の達成に至っていない。その一方で、曖昧かつ根拠の乏しい、あるいは明らかに虚偽であると言える環境関連の声明が氾濫していることが明らかになっている。規制当局はこの状況に対し、環境に関する主張は明確、検証可能かつ公約に基づいていなければならないと定め、技術的裏付けのない一般的な環境ラベル、マーク、またはフレーズの使用を禁止するなど、規制と監視を強化している。
欧州における最近の規制動向としては、検証されていない環境主張を禁止し、消費者がグリーンウォッシュ行為を特定・報告する仕組みを提供することを目的とした、グリーン移行に向け消費者に権限を与える(エンパワーメント)EU指令第2024/825号の採択が挙げられる。本指令には重大な制裁が伴い、その適用範囲は、持続可能性に関する虚偽表示、公認認証制度に基づかない環境品質認証マークの表示、製品・サービスの実際の環境影響に関する重要情報の省略など多岐にわたるため、主要企業も適用を免れない。制裁事由及び違反者の身元公表措置も当該新制度の特徴の一つであり、業界他社への抑止効果による特別な予防措置、及び消費者権利保護に寄与する。
グリーンハッシング
グリーンウォッシュに並行し、正反対の現象でありながら同様に懸念事項である「グリーンハッシング(greenhushing)」が台頭している。当該用語は、一部の企業が、グリーンウォッシュとの非難や、規制基準の未達への非難を恐れて、自社のSDGs関連取組み、及び目標達成に関する情報の意図的な隠匿や最小限開示の傾向を指す。グリーンハッシングは、一見規制強化に対する慎重な戦略のようであるが、実際には透明性を抑制し、持続可能性に関するベストプラクティスの共有を困難にすることになる。さらに、企業側のコミットメント不足、説明責任の欠如を理由に、消費者や投資家の不信感を招く可能性もある。そのため専門家たちは、誇張や戦略的沈黙を避けつつも、環境面での取組みを厳密かつ検証可能な形で開示するバランスを取る必要性を強調する。
制裁措置
グリーンウォッシュ行為に関連する制裁措置の強化は、広告分野だけに留まらない。環境ラベル、競争保護、およびエネルギー市場等の適用業界別の補足規則は、最大数百万ユーロに達する制裁金、行政機関との契約禁止、認可及びライセンスの停止等を含む制裁措置を定める。したがって、グリーンウォッシュは、重大あるいは非常に重大な行政違反と見做されるだけでなく、特定の状況では刑事上の違法行為と認められ、消費者、競合他社あるいは環境に損害を与えたことによる民事、もしくは商法上の責任を問われる可能性もある。
グリーンウォッシュと判断された行為により制裁を受けたイタリアにおけるShein社の事例は、イタリアの規制当局が根拠のない環境に関する宣言の撤回と市場への真実の回復を要求した他の最近の事例に追随するものである。同様にフランスでは、自社製品の環境特性を偽装したとして、エネルギー分野企業に対し多額の罰金を科した。これらは、企業は環境関連情報の正確性を保証するだけでなく、企業の持続可能性公約にアクセス可能なよう公開し、評価可能かつ独立機関による検証が可能であることを保証しなければならない、というEU全体に徐々に浸透しつつある共通のアプローチを示している。
企業に対する実務的提言
こうした動向は企業にとって、SDGsは単なるマーケティングのための宣言ではなく、企業戦略やビジネスモデルに沿った検証可能な現実でなければならない、といった一連の明確かつ不可避な教訓を突きつける。環境側面からのコンプライアンスプログラムの導入、独立管理・監査システム(EMAS IIIやISO 14000認証など)の実施、広告も含む、全ての一般大衆向け環境宣言文書の見直し・立証は、グリーンウォッシュに関連する法的・経済的・対外評判リスク防止のための必須措置となった。同様に、反復的もしくは組織的な違反は、制裁の加重、行政機関との契約資格の剥奪、不正取得利益の返還、違反企業の社会的公表につながる可能性についても留意する必要がある。
スペインでは、勅令第214/2025号に確立する枠組みにおいてこれらの要件を含め、すべての環境コミュニケーションにおけるトレーサビリティ、透明性、検証の義務を強化する。加えて、環境ラベルや認証の使用に対する管理強化を定め、企業の公的発表情報と実際の環境パフォーマンスの一貫性の確保のために定期的な社内モニタリングシステム実施することを義務付けることも特筆に値する。
これらの措置の厳格な遵守は、企業に依るSDGs関連行為・取組みの客観的な検証を容易にするだけでなく、透明且つ検証可能な根拠を提供することで、あらゆる環境宣言に対するグリーンウォッシュ制裁の可能性回避の一助となる。
結論
EUおよびスペイン規制、および制裁の枠組みは、結論として、企業に対し環境関連宣言の真実性の厳格な遵守を求めるだけでなく、持続可能性に関する責任、透明性、管理面での真の文化を確立することを求める。グリーンウォッシュは、制裁措置、市場からの排除、消費者あるいは投資家の信頼喪失等、今日では深刻かつ広範囲にわたる結果をもたらす可能性がある。そのため、環境方針に関する社内手続きあるいは対外メッセージについて、企業には、予防的かつ継続的な見直しの実行を推奨する。
シャミン・ハニフ (Shameem Hanif)
ヴィラ法律事務所
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2025年11月21日