スペイン税務当局敗訴:同族経営会社への富裕税免除訴訟

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導入部

同族経営会社に適用する富裕税制、特にグループ企業への出資に対する非課税措置は、会社資産の組織化及び管理に影響を与える実務上非常に重要な側面を有す。

これまで、スペイン富裕税法に定める、当該免除措置適用のための特定要件をどのように証明すべきかについては、解釈上の疑問が存在していた。バレアレス諸島高等裁判所は直近判決(2025年5月5日付案件番号第200/2025号)において、会社経営管理職務の「間接的遂行」の有効性についての明確な見解を示し、納税者にパラダイムシフトをもたらすこととなった。

免除の適用範囲

富裕税法は、以下に挙げる二つの必須要件を満たす場合、親族グループ企業への出資は非課税となることを定めている:

  • 同族グループ会社のメンバーの一人が会社経営職に就いていること
  • 上記職務に対する報酬が、対象者の事業・専門職所得、および個人就労所得の合計の50%以上を占めること

当該規定は配偶者、直系尊属、直系卑属、および2親等以内の傍系親族全員に適用されるがゆえに、上記要件の解釈は資産計画・承継続計画において極めて重要な課題となる。

バレアレス諸島高等裁判所直近の判決

スペイン・バレアレス諸島高等裁判所直近判決(2025年5月5日付、案件番号第200/2025号)は、スペイン税務当局にとって重大な敗北を意味するものとなった。本判決によって、前述の富裕税法第4条8.2項c号に規定される免除措置は、会社経営管理業務が中間会社を通じて行われる場合であっても、当該サービス提供の存在が証明される限り適用可能であることが認められることとなった。

SASGA-FRASA事件:経営職の「間接遂行」をめぐる論争

本件バレアレス諸島最高裁判決は、具体的には、バレアレス諸島税務局(以下「税務当局」)が、ある納税者及びその家族が保有するSASGA社株への富裕税免除を拒否したことに端を発した。当局は、経営職に就いていた原告兄弟の報酬の一部が、彼が100%所有する別会社FRASA社を通じて支払われていたため、富裕税法に定める50%という閾値に達していないと判断したことを拒否理由に挙げた。

税務調査官は、当該金額は別の事業体が支払っているために、計上不可能と判断した。しかしながら納税者は、SASGA社に提供していた経営管理業務サービスに対して、FRASA社が請求書を発行していたことを証明する証拠文書(会社定款、家族間合意、サービス提供契約書)を提出した。

司法判断

バレアレス諸島高等裁判所は、経営管理職に対する報酬が実際の職務遂行から生じていたことが証明可能である限り、グループ内の中間会社を通じての遂行も有効であり得ると認め、税務当局の見解を修正し、納税者の立場を支持した。

この場合、SASGA 社から直接受領した報酬金額(14,601.60 ユーロ)と FRASA社を通じて得た金額(18,921.84 ユーロ)の合計は、該当親族の総所得の 50% 以上を占めており、富裕税法に定める要件を満たしていた。

実務上の影響

本判決は、経営職の「間接遂行」が富裕税の非課税対象として有効であることを認める、同族経営会社にとって有利な解釈を確立した。これには以下に挙げるメリットが考えられる。

  • 組織の柔軟性向上。親族内で、富裕税免除を享受する権利を失うことなく、サービス会社を通じての経営組織構築を可能とする。

法的安定性の向上。税務当局がこれまで適用してきた制限的且つ不均一な基準に対し、事前行政上解釈(第V0810-18号、第V0158-14 号および 第V1863-17号といった判例を参照)が司法的に確認され、強化された。

  • 承継計画。富裕税の免除は、会社資産の世代間移転促進のための主要手段であり続ける。

本判決は特定の事例についてのものであるが、その法理は類似の事例に適用可能であり、富裕税法第4条8項2号c解釈に関する重要な判例となるだろう。今後の手続きでは、親族グループがいかなる会社組織構造を選択するにもかかわらず、サービス提供の事実及びこれに対する報酬の真正性を厳格に証明することが重要となる。したがって、同族経営会社に対しては、会社内部における合意、契約、役員選任、報酬の決定について慎重に構築、文書化することが推奨され、これにより規制遵守だけでなく、突発的な監査対応時の防御も容易にする。

結論として、当該直近判決は、組織的中立性の原則を強化し、増大する税務負担の圧力の中で同族経営会社に確固たる基盤を提供することになった。更に制限的な基準を定め没収的傾向を見せる行政を司法が是正し、前述のような免除措置の目的を尊重しつつ一貫性と厳格さをもって適用することで、同族経営会社の存続及び発展を促す安定した枠組みの提供に努めていることは、希望に満ちた動きである。

 

 

フリオ・ゴンサレス (Julio González)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2025年9月26日

2025-09-29T07:57:52+00:0026/09/2025|税務, 訴訟・仲裁|

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