2022年9月6日付サラマンカ県裁判所判決(案件番号ECLI: ES: APSA: 2022:699)は、本稿の題目について深い検討を行った。
具体的には、判例の第4、第5の法的根拠は、以下の問題を取り上げている。
I. 会社「重要な財産」の概念
株主総会決議の必要性
スペイン法人における「重要な財産」の概念は、改正資本会社法第160条f)、及び第511条bis(補足)に規定する。
まず同法第160条f)は、「重要な財産の取得、処分、他社への譲渡についての審議、決議は株主総会に権限がある」とし、続けて「該当オペレーションの金額が、直近の承認済みバランスシートに記載された総資産の25%を超える場合、当該資産は会社の重要な財産であるものとみなす」と、数値基準を定めてもいる。
次に同法第511条bisは、上場会社に対し、株主総会に留保されている権限(例:子会社化、清算、破産に関する決定、取締役の報酬額の決定等)に、一定の権限追加を規定する。
当該数値基準要件は、「反証を許す推定(iuris tantum)」である。つまり、オペレーション額が総資産額の25%未満の場合でも、重要な財産と認定される可能性を有し、同様に25%超であっても必ずしも重要な財産と認定されるとは限らないことを意味する。
したがって、当該数値基準要件からは、立法者の意図は、会社の組織、コーポレート、財務及び資産構造及び将来の事業活動等、会社にとって特に重要なオペレーションについては株主総会決議にあると留保することにあり、各オペレーションが有する実質的かつ実体的な特徴、及び会社と株主への影響を考慮する別の質的要素の存在が推論できる。
法学会の教義によると、会社財産処分のケースでは、以下の重要要素が生ずるとした
- 会社の資産、経済、または財務構成の改変
- 財産処分が会社目的の変更を意味し、会社の解散、または組織の変更につながる場合。
2018年10月16日付オウレンセ県裁判所判決及び2020年2月26日付アストゥリアス州裁判所判決では、これらの教義を適用した例である。
すなわち、会社における機関権限分配原則では、経営機関に経営管理・代表権が帰属するが、重要な財産に関するオペレーション実行については最高機関である株主総会に権限を留保するというように、コーポレイト・ガバナンスの保証観点においてこれが最良と見做される場合、立法者は意図的に例外を定めている。当該特別規定、改正資本会社法第160条f)は、常に制限的に解釈されなければならない。
Ⅱ–財産処分に関する株主総会決議欠如の影響
改正資本会社法第160条f)は、同条の不遵守の場合の結果を示していないが、一方で同法第161条(経営管理への株主総会の介入)は、条文内で第234条に言及し、善意の第三者保護を優先する。つまり、商業登記所に登記済み会社定款から、行為が会社目的に該当しないと判断できる場合であっても、善意かつ、重大な過失のない第三者に対しては、会社が義務を負うことを認めている。
従って、第160条第f)の沈黙には、2つの立場が存在する。
第一の立場は、善意の第三者に対して行われた重要な財産の処分行為は有効であると認める。他方、第二の立場は、株主総会決議を財産処分の有効性要件成立のための法的権限の留保とみなし、決議の欠如は絶対的無効を意味する、つまり行為の無効、及び提供物の返還が求められる。
判例及び法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」)決定は、異なる立場を支持してきた。
2018年10月16日付オウレンセ県裁判所判決は、善意の第三者保護のために行為の効力を支持した。一方、2020年2月26日付アウストゥリアス州裁判所判決は、「権限超過」を認め、会社における機関権限分配原則の侵害にあたるとし、2015年6月11日付登記所及び公証人協会決定や2008年4月17日付スペイン最高裁判所判決も同様の立場をとっている。2021年12月7日付ブルゴス県裁判所判決では、株主総会の決議がない行為は無効である、とした。そして2022年5月12日付ムルシア県裁判所判決は、善意の第三者の保護を理由に行為の有効性を認めている。
公文書管理局は、2015年12月14日、2017年11月22日および29日、2018年5月31日、2020年6月12日および18日、2021年4月13日の決定において、改正資本会社法第234条の適用と善意の第三者の保護を支持している。また、取締役には、オペレーション対象となる財産の非重要性証明書や宣誓書を提出する義務は存在しないと指摘しながらも、公正証書化された宣誓書の存在は、対抗当事者の注意義務と重大な過失の存在判断に面した際に、対抗力を有すと評価した。ただし、当該明示的宣誓の不在自体は、登記拒否の理由とはならない。登記官は、これが明白な場合、もしくは性質判断時に要素が確認できる場合に、財産の重要性を判断できるとした。
本稿の検証の対象ケースでは、控訴審にて一審判決を覆し、譲渡財産は重要性を有するにもかかわらず、株主総会決議という要件を満たすことなく処分されたことを理由にオペレーションの絶対的な無効性を確認した。結果的に、売買契約の無効を言い渡し、対象物の返還、登記の抹消を命じた上で、被告会社らに一審で生じた訴訟費用を課した。
ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)
ヴィラ法律事務所
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2023年5月12日