2021年6月10日付官報にて、法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)の2021年5月24日付決定が公示された。当該決定は、ある株式会社(S.A.)の取締役会が全会一致で行なった非取締役の書記役の解任及び新たな非取締役の書記役の選任にかかる決定についての公正証書の登記申請を、ビルバオ商業登記官が却下したことに関連するものである。
本件では、株式会社の定款第29条第2項において、「取締役会は、株主総会において選任がされない限り、書記役及び、必要に応じて、副書記役を選任することができる。取締役でない者を選任することができるが、この場合には議決権のない取締役会出席者となる。」
登記官は、以下の理由に基づき、登記申請がされた書記役の解任及び選任について申請を却下した。
解任された取締役会書記役は株主総会によって選任がされており、当該会社の定款第29条第2項によれば取締役会は「株主総会がしない場合に限り」書記役を選任できるとされている。すなわち、新たな書記役を取締役会が選任するためには、書記役には任期が存在しないことから、解任やその他の法的理由により当該役職が空席となる必要がある。そして、株主総会は新たな選任を行なっていない。これらすべてを鑑みると、まず、書記役の解任はその選任を行なった株主総会によってされるべきである。なぜなら、取締役会が解任できるとすると、株主総会によって書記役の選任がされた後まもなく取締役会が当該書記役を解任することが可能となってしまい、株主総会の権限が損なわれてしまう可能性があるからである。
当該登記官の決定に対し、以下の主張に基づき、異議申立てがなされた。
定款は書記役の解任について株主総会の決議によることを要請していない。したがって、商業登記規則第146条第1項に従い、当該役職の解任権は経営機関である取締役会に属し、当該役職が空席となった場合には取締役会が新たな非取締役書記役を選任することができる。
公文書管理局は本件決定において、取締役会書記役の会社内における重要性、書記役に関するシステム化された規制の欠如、及び、結果として会社自治として定款による定め又はそれがない場合における取締役会が定める規定に基づくことを示した。
公文書管理局の説明によれば、非取締役の書記役の役職は、その専門知識又は会社の従業員として契約された功績によって指定された者であり、通常は会社の永続性と内部機能についての知識が必要不可欠である他の業務(一般的にはアドバイス提供)を行うサービス関係又は雇用関係に基づき声がかけられる。したがって、定款又は選任にかかる合意において他に定めがない限り、書記役について任期はなく、会社との関係性を有する必要もないと理解されるべきである。さらに、定款に定めがない限り、取締役会がその過半数の決定でその解任について合意することができる。取締役会に与えられているこの会社自治の自由により、取締役会に対して非取締役書記役の解任権限を与えるべきであり、それが行使されない場合には、当該職務を遂行する人を選任する権限を与えるべきである。
本件について、公文書管理局は、株主総会の書記役を指定する権限が、取締役として選任された者の中から選任するに留まるのか、非取締役書記役の選任を行う可能性も含むのかについて事前に判断をする必要はないとの結論に達した。本件会社の定款は、文字通り理解すると、取締役会が株主総会によって選任された非取締役書記役を解任することを禁じていないことは明らかであり、いかなる場合でも、当該役職が空席となった場合には他の者を選任しなければならないとし、異議申し立てを認め、登記申請却下の判断を取り消した。
ヴィラ法律事務所
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2021年7月9日