I. 序文
2014年2月1日から、日本商事仲裁協会(JCAA)の改正商事仲裁規則が施行された。本改正は2004年の商事仲裁規則以降に行なわれた初の全面的な改正である。
JCAAの発表資料には、本改正は近時のUNISITRAL仲裁規則や国際商事仲裁裁判所、スイス仲裁法の改正という動向に沿うための改正であるとされる。
II. 改正の内容
JCAAによる本改正は主に以下の5つの重要な改正に分けて考えることができる。
(1) 仲裁人の選任
当事者が仲裁人を選任する場合、その選任の効力が生じるにはJCAAの確認が必要となる。また、改正規則によると、JCAAが仲裁人を選任する場合には、当事者がいずれの当事者とも異なる国籍を有する仲裁人の選任を求めたときは、これを尊重しなければならない。
当事者が三者以上の複数の場合で仲裁人の数が一人の場合は、当事者が共同で仲裁人を選任し、仲裁人の選任について当事者が合意に至らなかったときにはJCAAが仲裁人を選任する。
また、本改正規則では仲裁人選任における当事者の平等原則が導入され、仲裁人の数が3人の場合、申立人及び被申立人のそれぞれのグループにおいて1人の仲裁人を選任することとなる。
(2) 仲裁手続きの併合及び第三者の手続参加
本改正によって導入された規定により、手続きの併合や第三者の手続き参加の要件が明確化された。
(3) 調停
当事者が仲裁手続き中に調停を実施する場合の規定が制定された。本改正規則によると、仲裁人は当事者の書面による合意がなければ一方の当事者と個別に協議することはできない。また、いずれの当事者も当事者の合意がない限り、調停手続きで当事者がした提案、自白その他の陳述または調停人の示した提案を仲裁手続きにおいて証拠として利用してはならない。
(4) 保全措置命令
保全措置に関する規則を定めた。これにより、本改正規則に定める要件を充たす場合には、仲裁法定前に必要となる緊急仲裁人による保全措置を申し立てることができる。
(5) 簡易手続き
申立ての請求金額が2千万円以下の場合に適用される簡易手続き制度が導入された。この手続きは、請求金額の多寡にかかわらず、当事者が簡易手続きによる旨の合意をした場合にも適用されることとなった。
III. 結論
本改正は仲裁手続きの迅速化及び仲裁の先進モデルの採用に焦点を置いている。本改正により、日本における仲裁手続きの法的安全性をもたらし、日本国外の企業の日本で仲裁を行なうことに対する恐怖を取り除くための道を整えることとなる。
大友 美加
ヴィラ法律事務所
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2014年7月24日