I. 導入部

本稿では、有限責任会社(S.L.)における株式譲渡制限の定款規定について、ドラッグ・アロング・ライトとも呼ばれる株式の強制売却権を設ける変更を行うことに関する2017年12月4日付公証・登記局の決定を検証する。

II. 強制売却権: ドラッグ・アロング・ライト」

「ドラッグ・アロング・ライト」条項とは、第三者から会社の過半数又は全ての株式を取得する旨のオファーがあり、一人又は複数の株主が当該オファーを受諾したい場合、他の株主に対して、会社の株式を第三者に同様に売却することを請求し強制できる権利を認める条項のことである。

この条項についてスペインの法制度において明示的な規定は存在しないが、資本会社法第28条で規定される私的自治の原則に則り、株主間契約(内部的に有効)及び会社の定款(全ての当事者に対して有効)に含めることができる。

簡単に言えば、強制売却権とは、効率的な株式取引の成功を妨げるような行為による少数株主の権利濫用を防止し、多数派の株主の権利保護機能として働くものである。

III. 株主総会の定足数

本事案では、株主総会において株主の過半数によって可決された有限責任会社の株式譲渡制度に関する定款規定の変更の商業登記申請が却下された。

商業登記官は申請却下理由として、強制売却に従わなければならない株主の排除(同資本会社法第291条及び第351条にて規定)を惹起する可能性があるため、会社の定款に強制売却権を設けるには、資本会社法第199条第a)項に規定されている定款変更のために必要な特殊決議ではなく、株主全員の同意が必要であるとした。

しかしながら公証・登記局の決定において、以下の内容が加えられている。「全ての株主の同意は、必ずしもすべての株主又は株主の代理人が出席している株主総会で満場一致で採択された決議の形式でなければならないというわけではなく、他のすべての株主が株主総会又は株主総会後に個別に同意している場合には、過半数による株主総会決議があれば十分である」(商業登記規則第207条第2項に則る)

IV. 結論

したがって、株主総会は、ドラッグ・アロング・ライトを会社定款に加える定款変更を、過半数による決議で採択することができる。しかしながら、当該定款変更を登記するには、すべての株主が総会時又は総会後に当該定款変更に個別に同意することが必要である。

 

 

ヴィシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年1月26日