2012年以降、勅令第1657/2012号により、スペインでは、私的複製に対する補償金は公的資金によって賄われていた。すなわち、国家予算において年間の一定の金額が補償金にあてられている。

公的資金による補償制度の結果、知的財産権の管理団体は国家予算から年間500万ユーロを受け取っていた。勅令第1657/2012号の施行前は、受領していた金額は1億1500万ユーロであった。

2013年、EGEDA, DAMA及びVEGAPの3つの知的財産権管理団体は、補償金は公的資金により賄われるべきではなく、私的複製のユーザーによって支払われるべきであるとして、当該勅令の廃止、すなわち、公的資金による補償制度の廃止を求めて訴えを起こした。

この問題は、2016年11月10日付最高裁判決によって解決された。

当該判決は、欧州司法裁判所の2016年6月9日付決定の内容に言及し修正するものである。当該欧州司法裁判所の決定は、スペイン最高裁自身が提出した予備的質問に対してなされたものである。欧州司法裁判所は、スペインの制度は、公正な補償のための費用が、最終的には、私的複製を行うユーザーによって負担されることを保証していないと結論付けた。また、欧州司法裁判所は、公的資金による私的複製の補償が可能だとすれば、それは欧州指令第29号/2001年と両立し得るものであり、その補償制度が、知的財産権保有者に支払われる補償金が最終的に私的複製のユーザーによって負担され、さらに、知的財産権の高度の保護を提供する目的を満たしている場合(例えばフィンランドやノルウェーの制度)に限られるとした。また、当該決定は、国家が補償金の最終負担者となることはできないこと示し、この点において、スペインの補償金制度は、補償金の全てが国家予算、言い換えれば、納税者全員の資金によって支払われていることから、私的複製のユーザーのみがそれを負担することを保証しているとは言い難いと判示した。

そして、スペイン最高裁は以下の事項を明白にした。

a)     本件で提示された問題はEU法の問題である。

b)     公的資金による補償が、欧州の規則と両立するようにするのは、非常に難しい作業である。なぜなら、スペイン法令では特定の支出のために割り当てられる具体的な収入は存在しないからである。つまり、税収は一度国庫に納められ、資金の源泉が何であるかを問わず、異なる基準に従って配分される。このことを念頭に置くと、スペインの公的資金による補償制度は欧州規則2001年第29号と両立しない。

c)     より広い意味において、しかし特筆すべきことは、最高裁はある国内法規が欧州の法令と矛盾する場合には、当該法規は、違憲である可能性とは分けて、適用を無効としなければならない(Simmenthal事件(C-106/77)参照)。これをもって、憲法裁判所が懸案の法令について違憲可能性を示唆するまで法的手続きを中断するという国側の弁護人から要請への回答がされたと言える。したがって、勅令第1657/2012号は無効と宣する。

d)     また、自身の収入に明らかに損害を与える制度の取り消しを求める行為であるとして、3つの原告団体の当事者適格を認めた。例えば、CEDROは、原告団体ではなかったが、過去の制度では年間2000万ユーロを徴収していたのがその徴収額はせいぜい100万ユーロとなった。

e)     上記a)で述べたように、本件の勅令については、最高裁は、原告団による国内法に基づいた主張や非難を、根拠がない、又は、いかなる場合においても決定的なものではないとして、退けた。

f)      原告団によって言明されたこととは反対に、最高裁は、2012年のスペインにおける「明らかに重度かつ例外的な」経済情勢を鑑み、勅令を補償金の導入手段のための法令として用いたことの合理性を認めた。

g)     そして、上述の欧州司法裁判所の判決に照らし、スペインの制度は有効な法的根拠に欠け、無効であると宣言した。

このように、スペイン政府は、それが適切であるならば、欧州規則と両立可能な新しい公的資金による制度を創設するか、それを行わないのであれば、知的所有権管理団体が国家の介入なしに補償金の回収機能を実現できるような施策を施さなければならないだろう。

 

 

ヴィラ・エドゥアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2016年11月25日