本記事では、破産手続きの清算段階における抵当権設定の可能性に関して判断した、2019年12月2日付スペイン登記・公証局の興味深い決定について分析する。
まず初めに、スペイン破産手続の各段階について、簡潔に説明すべきであろう。破産手続は二段階の期間が設定されている。つまり、共通期間とその後の合意期間、又は清算期間である。共通期間中、破産者は裁判所決定により、次の二つの状況のいずれかに該当することになる。(i) 破産管財人の承認又は同意を要するが、財産の管理及び処分権限を維持する場合、又は、(ii)破産管財人が破産者の権限を代替えするため上記権限が停止される場合(破産法第40条)である。原則として、当該期間の権限に抵当権の設定が含まれる。
問題は清算期間に生じる。なぜなら当該期間は、債権者に対する弁済に充当するために、破産者の財産の換価に必要な手続きを行うことを唯一の目的とした、特に厳格な期間となっているためである。したがって、当該期間中に純粋な清算手続以外の手続きを行うことは、原則として不可能であろう。当該主張は、ある自然人の破産手続の清算段階において、抵当権設定にかかる公正証書の登記申請を却下する際に、不動産登記官が採用したものである。
この点につき、自然人か法人かによって取り扱いに区別を要することに留意が必要である。
法人の場合、清算期間の開始は解散手続の開始と同視され、スペイン資本会社法第383条以降(債権回収等々)に定める規定により清算手続き業務は破産管財人に委ねられている。それ故に、財産の取得や義務の設定(抵当権等)のような処分行為が許されていない。
一方で自然人破産の場合、破産清算期間は、会社の消滅や会社の法的取引の消失を目的としているのではなく、自然人は生存し続けるため、法人とは異なる取扱いをすべきである。事実、自然人債務者に対しては残債務の免責等のような仕組みを通して破産状態から脱することを可能とするような立法努力がなされている。(2015年7月28日付法第25/2015号セカンドチャンスのメカニズム、債務負担の軽減、及び社会的要請によるその他の方法、等の法律による)
これらの点を明確にした上で、スペイン登記・公証局が判断した本件は、ある自然人が自己破産を申立て、その清算期間中に作成され、破産状態を脱するために全債務の弁済を目的として破産管財人によって正式化された抵当権設定にかかる公正証書に端を発した。抵当権を設定したのは、債権者の一人である銀行である。
当該債権の申請により、認知されている債権全額が弁済された場合、その他の方法により債権者が完全に満足を得た場合、あるいは破産状態が解消された場合は、いかなる破産手続きの段階においても破産手続きの完了ができるとするスペイン破産法第176条1項4 号の規定要件を満たしているとの裁判官の判断により、当該自然人破産者は破産手続き終結の決定を得て、破産状態から脱することができた。
したがって、 (i) 債務者の破産状態からの脱するという債務者に有益な性質を有し、(ii)債務弁済のために抵当権を設定することで金融機関にも有益な性質を有し、 (iii)他の債権者の不利益とならず、かつ(iv)抵当権設定にかかる公正証書が登記所に登記することにより、債務者の財産管理権限及び処分権限が完全に復権することを理由に、スペイン登記・公証局は、当該抵当権の設定は登記可能であるとの判断を示したのである。
マデロ・ハイメ (Jaime Madero)
ヴィラ法律事務所
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2020年2月28日