資本会社法は、ある会社の取締役に他の会社が就任することが可能である旨を明確に規定しているが、法人は自身の運営能力を欠くという考えに基づき取締役という役職が存在するのであるから、 逆説的であるように思われる。
上記の内容を考慮すると 、以下の疑問が生じる。
誰が事実上の「取締役」の職務を履行するのか。つまり、法が取締役に与える機能を誰が果たすのか。
取締役たる法人の業務執行者として取締役の職務を事実上履行する者はどの程度の責任を負うのか。
以下において、これらの疑問に一つずつ答えていく。
職務執行者の選任
資本会社法第212条bisは「法人が取締役として選任された場合には当該法人は取締役の職務を執行するために自然人を一名選定しなければならない。」と規定する。
・職務執行者の個人情報は、法人の取締役への選任の登記がされるのと同時に商業登記所に登記がされなければならない。
・職務執行者として自然人1名のみしか選定できない。共同または連帯する形で複数人を選定することは認められない。
・選定された自然人は取締役として選任されるための要件(取締役の資格剥奪をされたことがない、法的能力を有している等)を満たしていなければならない。
・その他に特に定めがなければ、2013年7月10日付登記公証局決定の定めるところに従い、職務執行者の選定にかかる権限は、取締役として選任された法人の経営機関に属する。
・職務執行者として選定された個人が取締役法人の経営機関に属する場合、取締役法人の経営機関の決議証明書があれば足りる。それ以外の場合には、公証人により作成される委任状が必要となる。
職務執行者の責任
資本会社法第236条第5項は職務執行者の責任について、「法人取締役の職務執行のために選定された自然人は、当該法人取締役と連帯して取締役の職務及び責任を負う」と定める。
この規定により、法人取締役の職務執行者は、 その職務執行によって会社または第三者が被った損害について、それが法の規定により職務執行者の責めに帰すべき事由による場合には、当該法人取締役と連帯して責任を負う。したがって、職務執行者を選定したからといって法人取締役自身の取締役の責任を回避できることにはならない。むしろ、職務執行者たる個人と法人取締役自身という、二つの法人格に基づく責任について連帯責任を負うことになる。
ヴィラ法律事務所
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2016年4月29日