2021年12月29日付スペイン官報にて、2021年12月13日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が公示された。当該決定は、ある有限会社(S.L.)の会社の 取締役辞任、経営体制の変更及び一人取締役の選任にかかる公正証書の登記申請を、マドリード商業登記所登記官が却下したことに関するものである。
商業登記官は、以下の2つの理由に基づき、本件公正証書の登記を拒否した。
1) 採決された決議について過半数を示さなければならない。
2) 定款に定める手続きに則って株主全員に招集通知全文が送られ、その後の連絡がされたことを証明しなければならない(商業登記規則第97条及び第112条)。
この商業登記官の判断について異議申し立てが提起された。
公文書管理局は、上記1点目の理由につき、異議申し立てを退け、登記官の判断を支持した。その理由は以下のとおりである。
2015年10月13日付公文書管理局決定によれば、議事証明書において、該当する議案の決議の過半数を直接かつ明示的に記載する必要はなく、その記載内容から明確に推測されれば足りるとされている。しかし、本件においては、議事証明書には株主2名が出席し、それらは議決権の80%を保有しており、株主総会決議は「特段の異議なく」行われたとことは記載されているが、2名の株主全員が賛成票を投じたのか、どちらか1名の株主は白紙票または棄権したのか、いずれも推測も可能であり、必要な要件が明確に記載されているとは言えない。
2点目の理由について、公文書管理局は異議申し立てを認め、登記官の判断を取り消した。その理由は以下のとおりである。
議事証明書によれば、会社には株主は3名しかおらず、そのうち1名は本株主総会に出席せず、招集通知はBurofax(内容証明郵便)で送られた。その送付証明は公正証書に添付されていた。残りの2名の株主は、株主総会に出席しており、招集通知送付に先立ち、個人的に招集について伝えられていたため、書面による送付は必要なかった、とのことである、2019年1月25日付公文書管理局決定において指摘されているように、株主総会決議を無効とする株主総会招集手続きの要件欠如又は不備について考えるにあたって、当該結果が会社又は株主に多大な影響を及ぼすことに配慮し、関連性が乏しい株主の個人の権利を侵害しないことを条件に、形式的な不備については、これを回避できるように、その判断が緩和されなければならない。本件については、議事証明書及び公正証書において、2名の株主が招集手続きに先立ち個人的に招集が知らされ、株主総会に出席し、「異議なく」、つまり、招集手続きについて何ら異議が唱えられることなく決議を行ったことが記載されている。したがって、2点目の理由については、登記官の判断は取り消されるべきである。
ヴィラ法律事務所
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2021年12月28日