2022年3月25日付スペイン官報にて、2022年3月7日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が公示された。当該決定は、ある合同会社(S.L.)の株主総会決議にかかる公正証書の登記申請を、マドリード商業登記所登記官が株主総会招集手続きに瑕疵があるとして却下したことに関するものである。
本事案において、当該会社の株主総会は、当該会社の定款規定に従い、「個別に書面により各株主に送信」がされ、「受領証明付きの証明通知」により実施された。本件公正証書には、「証明通知 本書は2002年7月11日付法第34/2002号「情報及び電磁的コミュニケーションサービス事業者に関する法」第25条に定める信頼のおける第三者機関により発行された証明書である。」という表題の文書が添付されていた。また、当該公正証書には、当該会社により作成された公証認証がされた文書が添付されており、当該認証文書において公証人は、示されたサーバーにおいて特定の電子メールの送受信がされたことが確認できた旨の証明がされていた。
本件公正証書の提出を受けた後、商業登記官は、株主総会がスペイン郵便電報公社(「Correos」)により発行された受領証明付きの電子メールまたは証明郵便によってなされたことが証明されないことを理由に、本件公正証書の登記を拒否した。
この商業登記官の判断について、会社側は、株主総会招集通知は信頼のある第三者機関を通じて電子メールで送信されており、証明郵便によって送付されたのではない。したがって、スペイン郵便電報公社を通じて招集通知を送付する必要はない、と主張し、異議申し立てが提起された。
公文書管理局は、本件異議申し立てを退け、登記官の判断を支持した。その理由は以下のとおりである。
公文書管理局において繰り返し確認されている見解によれば、株主総会の招集手続きにかかる定款規定がある場合には、当該手続きは厳密に遵守されなければならず、他の手続きによる招集が有効かつ効果的となる可能性を認めることはない。したがって、定款により定められた招集手続きの形式が優先されなければならず、裁判所又は登記官による招集の場合も含み、招集を行う場合にはいかなる場合においても当該形式を適用しなければならない。
定款が、招集通知の形式を受領証明付き証明郵便と定めている場合、経営組織による変更がされることなく、招集通知の具体的な送付方法を定めているものである。これは、株主が具体的にどのような方法で招集されるかを知る権利を有しているためであり、株主が当該方法によって招集されることを期待し、注意を払う必要がある唯一の招集方法となる。
2010年12月30日付法第43/2010号第22.4条に従い、郵便ユニバーサルサービス事業者(スペイン郵便電報公社)により実施された通知は、行政機関及び司法機関からの通知の配達、送信及び受領・拒否・配達不可能についての信憑性と信頼性の推定が与えられる。同法は第22.4条第2項において、「他の郵便事業社による通知は、コモンローの規則に従って効力を生じるものとする」と定めている。すなわち、他の事業者は行政機関の通知を行うことはできるものの、当該通知は法によって郵便公社に与えられる信憑性を欠くということである。
本事案において、会社は公正証書内で株主総会は定款の規定に従って、「個別に書面により各株主に送信」がされ、「受領証明付きの証明通知」により実施され、信頼できる第三者機関の介入を得て電子メールで招集通知を送信することは、株主総会が電子メール又は受領証明付きの証明郵便で送付されなければならないとする定款の定める要件を満たしていると宣言する。
この定款規定について、招集通知の伝達が「受領証明付き」でなされなければならないと解釈がされることは明確であり、当該規定によればこの受領証明は証明郵便のみならず、電子メールで送られた場合にも、すべての株主によって招集通知が受領されたことを保証する目的で、資本会社法第173条の定めを遵守した方法での受領証明が求められる。なお、例えば、読了確認や送受信の証明ができるその他の方法により、受領証明が可能となるような付随手続きがなされた場合には、公文書管理局は、電子メールによる招集通知制度を認めていることは留意されたい。
本件について、公文書管理局は、信頼できる第三者機関が発行した証明書は、会社や株主総会とは関係のない送信者及び受信者のデータ(いずれも決議証明書に記載されている株主の情報と一致しないデータ)を含むことで、当該証明書に反映されるデータの信頼性を欠くものであり、定款の定めを遵守していないと結論づけた。また、公証人作成文書において「招集通知の送信が、受信者の個人情報と照らして、通知の受信者であるはずの株主の知るところとなったことが証明されていない。」とも述べた。
この決定について、電子メールによる招集通知を招集方法と定める場合には、受領証明の方法について、経営組織が、付随的な文書の作成をする必要なく、株主総会議事録内で定款の規定に従って電子メールが送信され株主により受信がされた旨を宣言するのみで済むように、株主によって具体的に定められなければならないと理解することができる。
ヴィラ法律事務所
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2022年4月8日