スペイン資本会社法第173条は、株主総会招集手続きの有効性にかかる要件を定めている。会社のウェブサイト掲載という一般規定の代替方法として、同条第2項には、全株主(出資者)の通知受領を保証する、書面による個別招集制度を会社定款に設けることができるとも定める。
招集は、各出資者、株主に対して開催予定の総会について通知し、認識させることにより、出席、受任者による出席、もしくは不参加等の自由な決断を目的として実行することに議論の余地はない。
スペイン法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)は、会社定款に総会招集手続きについての規定が存在する場合、その手続きの「厳守」を義務付け、通知数の多少に関わらず、他の招集システムを使用することはできないとの決定を、幾度も下している。(多数ある中で特筆的に2015年6月15日、2016年4月25日、2018年10月25日、2019年10月4日、2022年3月7日付決定を参照)。故に、定款に定めない手続で通知が実行された場合、当該招集には瑕疵があったとされ(開催に至った場合の)総会で採択された決議は、商業登記所に登記されない。
この非常に明白な肯定と結果は、定款が、会社の経営規則を定めることを目的とし、企業活動の基盤となる規範であるという事実に基づいている。当該見解は、判例法によっても支持がなされており、例えば、2001年1月30日付スペイン最高裁判決(判決文中には前記の判決引用がある)にそれが確認できる。
1999年11月24日付決定 (2006年4月29日および2014年2月28日付決定において再支持)は、定款遵守の義務は明確であるが、特定の状況においては、他の通信手段による招集を有効とする可能性を肯定した。具体的には、総会招集の通知が裁判所による発行の場合、定款規定を遵守した発行の場合と同様の効力を与えるとした。
直近2025年6月7日付公文書管理局の決定では、総会招集を実行する経営機関には、出資者や株主への通知制度を変更する権限が欠如している(2015年10月21日付決定)ことが、再認されることになった。当該紛争解決機関(公文書管理局)は、それを以下のように正当化した。
「……)株主は、具体的にどのような手続で招集されるのかを知る権利を有す。株主が招集を期待し、注意を払うべき唯一の手続きは、この知らされた手続きに限られる。」
しかしながら、スペイン資本会社法第28条に定める私的自治の原則に基づき、この手続きは、株主らが定款変更することにより変更が可能であると指摘している。
会社定款上の強行規定に対する例外の存在、個人ライフスタイルの劇的な変化、また看過できない膨大な数の判例を考慮すると、追求する目的を効果的に達成し、各事例の事実を照らし合わせるために、経営機関に対し更に多くの選択肢を提供するより柔軟な基準の採用に、我々は賛成をする。これは、特別な状況においては、定款規定外の手続きで実行される総会招集通知に効力を与えることを意味する。
- 一般的前提条件として、代替的な通知制度を適用する場合には、定款規定手続きと同等、もしくはそれ以上の周知度、あるいは受領保証がなければならない。例えば、配達証明付郵便の代わりに、burofax(法的効力を有す内容証明郵便なため、受取人により多くの保証を提供する)を使用するような例が挙げられる。
- 実務上、通知手続きの実行が不可能な場合:例えば、定款にはburofaxによる通知を定めるが、株主の一人、または複数が居住する国内にそのようなサービス提供がない場合、もしくは配達に要する時間が総会開催予定日を超える場合。
- 株主らの口頭事前同意を得た場合に、定款に定める以外の通知制度を利用し、さらに全株主が招集通知の受領確認をした場合。
- 通知先住所には、株主が移動生活中心であるため、もしくは中・長期的に不在としていることが知らされており、不在であることが判明している場合。電子メールの送信あるいは受信確認を可能とする一定の技術的条件下で電子メールを送信することは、有効な代替システムであると考えるべきである。
上記の形式は、以下に挙げるような、通常でない悪状況に直面した際の予防措置となる。
- 定款に定める手段による通知が不可能なため、総会開催が現実的に不可能である場合。あるいは、通知を行ったとしても、株主が受領不能である、もしくは総会の開催日以降に配達されることが判明している場合。
- 株主側に悪意がある場合。例えば、全く形式的な理由で株主総会の不開催を希望している場合、総会決議に無関心で、決議に対し異議申立ての事前準備を行っているが、開催阻止のための多数派を有していない場合等、
- 特別総会、緊急特別総会開催の遅延、もしくは事実上開催が不可能な場合。
公文書管理局が、このような問題ケースへの解決策として、事前に通知制度についての定款変更を提案することは、合理的ではないと思われる。これでは、市場ダイナミズムや、非常に複雑な企業活動の将来性を認識していないようである。多くの会社の場合、その定款はデジタル化以前の数十年前に作成されたものである。今日では、通知手段の側面から時代遅れとなっている。(差出人及び受取人の両者に同等、もしくは現行以上の保証が可能な手段が存在するもかかわらず、受領確認を義務付ける書面通知にこだわるのは合理的ではないと思われる。) 他方で、多数派株主が定款変更をしないことに利益を見出し、当該状況を意図的に長引かせている可能性もある。
重要視すべきは、手続ではなく、問題の本質である。株主総会開催通知制度が会社ウェブサイト掲載によらない場合、開催事実、及び議案について知らないことを回避するために、株主らに招集通知受領の保証をする。ここまでに何ら異論はない。しかし、有効な開催通知分析の手続面にだけ焦点を当て、結果に目を背けているとすれば、機敏性を優先する法的取引や会社内部統制にペナルティを課しかねない不正が行われることになる。現在では、通知配達を保証する様々な手段が存在するので、株主らの知る権利と相反する必要はない。株主が招集通知を、定款に定める手続きによる受領を待ち受けているという理由で、代替通知制度の利用を厳禁としていることを正当化するのは賢明ではないと思われる。それは、我々が、視覚によってのみで、その他の感覚では周囲の事象を認識できないと主張するのと同じくらい不合理なことである。
以上に基づくと、定款に定める株主総会招集通知手続以外の手段を用いることは、例外的に、その使用に正当な理由があり、かつ、その代替手段によって通知を効果的な方法で送達し、配達もしくは受領証明を取得できる場合に限り、認めるべきであると考える。反対の立場を取り続けることは、時代錯誤であり、形式への固執の不必要な誇示は、スペイン資本会社法第173条の最終目的から外れており、会社の企業活動の前進を妨げるだけでなく、株主自身の側にも完全に回避可能であったはずの不公平を招きかねない。ここでは、例外の原則化を支持するのではなく、代替制度の使用を妨げることで、総会の開催自体の妨げとなり、引いては会社または株主の利益を損なうような場合、本代替通知制度が株主らに有効に通知し、株主の基本権の侵害がないことを条件とした上で、代替通知制度を支持していることをへの理解を強調する。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2025年7月18日