スペイン最高裁は2016年6月29日付判決において、合同会社における株主排除の株主総会決議を有効にするために求められる裁判所の決定を取得する期限の解釈について、自身の立場を確認した。
スペイン合同会社(Sociedad Limitada)の少数株主を排除する合意は株主総会の特別決議(3分の2以上の議決権による賛成)によって承認されなければならない(資本会社法352条第1項)。当該決議には排除の対象となる少数株主は参加できず、決議の定数としても算入されない。したがって、単独で3分の1以上の議決権を保有する株主が排除される可能性はない。
排除される株主が25%以上の出資持分を保有する場合、当該株主を排除する旨の株主総会決議は、それが有効となるために裁判所による確定決定を得なければならない(資本会社法第352条第2項)。そして、裁判所の追認を得るための司法手続きは、原則として会社が行うこととされており、会社が当該司法手続きを株主総会の決議から1ヶ月以内に行わない場合には、株主が会社に代位して当該手続きを行うことができる(資本会社法第352条第3項)。
この1ヶ月の期間の解釈について、上述の最高裁判例にかかる事例において争われた。
本件は、50%の出資持分を保有する株主を排除する株主総会決議が2010年12月10日に行われたものの、会社が当該株主の排除のための手続きを実施しなかったため、2013年5月29日、他方の50%の出資持分を有する株主が、裁判所に対して訴えを提起したという事案である。原告側は、少数株主排除にかかる株主総会決議が有効であり法に適っていることの確認を求めたが、被告は、訴えは却下されるべきであると主張した。第一審では原告の訴えが退けられたが、原告側が控訴し、第二審において、当該株主総会決議は有効であると判示され原告側の主張が認められたため、被告側が上告、本件は最高裁で争われることになった。
最高裁は、資本会社法第352条第3項の解釈について、以下の見解を示した。
「資本会社法第352条第3項は、会社は、同条第2項に定める少数株主の排除のための手続きを実行するための期間として株主総会決議の日から1ヶ月を有し、会社が当該手続きを実行しないまま当該期間が経過した場合には、補助的に、当事者としての資格が当該株主総会決議において賛成に投じた株主に移る。そして、株主は会社が当該手続きを実行していないことを知った、または、知りえた日から1ヶ月以内に当該行為を実行しなければならない。当該期間内に会社も株主も当該行為を実行しない場合には、株主総会決議は効力を失う。」
つまり、株主総会決議から1ヶ月という期間は、株主総会決議に効力を持たせるための司法手続きを会社が行う場合に適用される期間であり、当該期間においては、会社のみが司法手続きを要請する資格を有している。そして、当該期間の経過をもって、株主が会社に代わって司法手続きを行うことができる資格を有するのであり、352条第3項の1ヶ月の期間はそれ以上の意味を持たない。なお、株主による司法手続き実行可能期間は、会社が司法手続きを実行しなかったことを株主が知った日または知りえた日から数えて1ヶ月となる。これは2003年4月9日付最高裁判決第351号において述べられた見解を踏襲しているといえる。すなわち、「会社自身が手続きを行う場合に限られた期間内に行わなければならない一方で、株主が会社に代わって行う場合には期間が拡張されると解するのは合理的ではない。課せられる期間は同一とすべき。」との見解である。
本件において、会社が株主排除にかかる手続きを行わなかったことを原告が知ったのは2011年1月28日であることが第一審で確認されていたため、最高裁は被告による上告を認め、第二審の判決を取り消した。
大友 美加
ヴィラ法律事務所
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2016年12月16日