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2023年9月22日付及び2024年3月8日付記事にて、会社取締役報酬の損金算入問題に関するスペイン最高裁判所の基準変更、及び「リンク理論」と呼ばれる理論の適用についての分析を行った。スペイン最高裁判所は、税務当局の見解に反して、上級管理職であると同時に会社の取締役会の構成員である者が受領する報酬は、報酬受領者と会社間には商業的な関係性が存在するため、もしくは、報酬についての商業的要件(取締役職の報酬性に関する定款規定の有無、および株主総会による報酬額の承認)が遵守されていないため、当該報酬が会計処理、証明され、実際に取締役が提供した役務に呼応することを条件として、TRLIS(法人税法)第14条1項e)の寄付金の損金不算入には該当しないとの判断を示した。高等裁判所は、2023年6月27日付2023年11月2日付、2024年1月18日判決付、2024年3月13日付、および直近の2024年6月13日付判決においてこの基準を維持している。

スペイン中央経済行政裁判所(TEAC)も同様に、2024年2月22日付及び2024年5月27日付判決にて上記立場を採用している。2024年2月22日付判決においては、同裁判所は、執行職能を有する取締役会構成員が受領する報酬の損金算入について分析をせねばならなかった。その際に最高裁判所判例を引用した上で「リンク理論」の改善を評価し、検討対象となったケースにおいて、報酬は適正に会計処理され、実際に提供された役務に呼応するものであったとして、上級管理職が受領する報酬の損金算入を認めた。

しかしながら、中央経済行政裁判所は、同一人物が取締役、かつ上級管理職としても報酬を受領し、それぞれ報酬の区別が可能場合、取締役報酬についての商業的要件が遵守されていなければ、取締役として受け取る報酬は損金不算入とされる可能性があるとした。この見解は、上級管理職としての報酬は損金算入されることに影響は及ぼさない、との見解も示していた。

その後、中央経済行政裁判所は前回、2024年2月22日付判決で用いられた基準は、2024年3月13日付最高裁判決に置換されたとの見解を示した、2024年5月27日付新判決を下した。中央経済行政裁判所は、つまり、取締役報酬(商取引関係)と上級管理職報酬(雇用関係)を明確にすることが可能であったとしても、定款に報酬に関する規定が存在しないことのみをもって、取締役報酬が税務上損金不算入と判断することはないと裁定した。

 

ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)

ヴィラ法律事務所

 

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2024年7月19日