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スペイン資本会社法第180条は、「全ての取締役(los administradores)は株主総会に出席しなければならない」と定める。

当該義務の存在に議論の余地はなく、そして、取締役全員の出席を要求しているように理解され、取締役が欠席の場合は、規定に違反することになる。同様に、同条は義務対象として「経営管理機関:órgano de administración」ではなく「取締役:los administradores」を指名しているため、共同、もしくは複数取締役全員の出席を意味するが、取締役会が会社の経営管理機関である場合は、少なくとも会社の定款に定める必要出席数を満たせば事足りるとする点にも留意を要する。

以上を明確にしたとしても、いずれにしても、当該義務を全面的・部分的に違反した場合の制裁や結果を、法律は明確に定めないため、出席義務を有する取締役が出席せずに開催された総会(またはそこで採択された決議)が無効とみなされるかどうかという疑問が生じる。

2023年11月15日、27日付で、法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)は、類似案件の2つの決定を発表し、上記問題に関する見解を示した。

両案件に共通する基本的な争点は、3名いた共同取締役のうちの1名が死亡を理由に、残りの2名が招集した株主総会の開催であった。本総会の目的は、死亡した共同取締役の後任を選任することにあった。株主総会は後任者選任を唯一の議題として開催され、株式資本の80%に該当する者が出席し、新規に共同取締役1名が選任されることになった。

商業登記官は資本会社法第180条違反を理由に本件登記を拒否し、当該不備を「修正不可能」であると宣言した。本件を担当した公証人が代替判断請求(注:他の登記官の判断を請求できるシステムが存在する)をし、選任された代理登記官も、取締役は非常に個人的な性質の職責を有するために、他の人物に交代させることはできないという理由で、当初の登記官の決定を支持した。しかし総会の成立が無効であるとはしなかった。

最終的には、公文書管理局は登記官らの決定を覆し、株主総会の有効性及び新取締役選任の決議を認める決定を下した。

取締役の株主総会出席は、会社にとって不可欠な機能が総会で決定される限り、必要かつ義務である。しかし、取締役の出席が株主総会成立の必須条件でない場合は、欠席によって会自体の成立やそこで採択された決議の無効性を結論づける必要はない。

全取締役が総会に出席していない場合は、資本会社法第180条の違反となる。したがって、総会の有効性の問われることになるのは当然のことと思われる。しかし、すべての場合を無効とすることによって罰せられるべきものであるかどうかは明確でない。

当該問題について、ある最高裁判決は、取締役らが株主総会を欠席した場合、具体的なケース毎に状況を考慮し、総会開催の中止や開催された会を無効とすることが正当であるかを検証しなければならないとしており、例外的なものと理解すべきである。取締役らは、株主や出資者らが議案の事実背景を十分に認識した上で議決権を行使できるような情報を提供するために総会に出席する場合、株主の意思決定プロセスに影響したり損ねたりしないのであれば、総会の有効性に関し致命的な結果をもたらす不備として理解されるべきではない。むしろ、資本会社法第204条に定める異議申し立て事由とならない軽微な不備と、理解すべきであると結論づける。しかし、出席が可能であったにもかかわらず出席しなかった取締役の個人的責任を追求しないものではない。

前述の最高裁判決は、取締役の総会への出欠を総会成立の無効原因としないという基本原則を確立した。もし有効性の判断がそのような状況に左右されるとなると、株主総会の有効な開催は、取締役次第となる。しかしながら、当該原則には例外が設定されており、それぞれのケースが個別に判断される。株主や出資者が審議、採決を実行する際に、取締役らの提供する報告書やデータが必要な場合は、取締役の総会への欠席は形式的というよりも実質的な不備となる。つまり、このよう例外を設定することで、当日の議題に関する立場を採用するために必要な情報を得る機会を奪われた場合は、総会または決議の無効の請求訴訟の根拠となる。

「法的妥当性」の原則にもとづく当該基準は、比較的直近のレリダ県高等裁判所判決(2020年12月23日付)において、「違反行為が、純粋に形式的もしくは手続き的な側面に限定されず、法的利益あるいは資産に直接的かつ関連のある影響を及ぼしていると判断されるのが妥当である場合」にのみ、無効の制裁は留保されるべきであるという点を強調し、表現されている。

さらには、取締役の欠席が、特定情報へのアクセスを不可能とすることを意味しても、株主総会自体が無効となる理由にはならないと、2016年6月30日付バレアレス諸島高等裁判所判決は指摘する。このケースは、株主の質問に対し、総会開催後にも回答が可能である場合である。結果的に資本会社法第180条に抵触する可能性は残る。しかしながら、株主の情報を得る権利の侵害は意味しない。

取締役の株主総会欠席が、会そのものや決議の無効をもたらす可能性は、最高裁判所によれば例外的なものであり、「均衡を図る」必要がある。株主が、追加補足情報の提供を請求する権利を取締役に対し行使している場合、取締役全員の欠席は、総会開催または採択された決議の有効性を損なう可能性がある。しかしながら、これは常に、議題の性質上、追加補足情報の提供請求を要するような性質であった場合、全取締役の出席が当該情報へのアクセスを遮断する様な場合に限定される。それに該当しない場合、資本会社法第204.3条に基づき総会成立と決議に異議を申し立てることはできないと定めると理解すべきである。

公文書管理局の決定で述べているように、第204.3条は「株主総会前の情報受領権の行使への対応として、会社から提供された情報が不正確または不十分」であった場合に採択した決議に対する異議申立てを妨げている。従って、全取締役が出席していないことが、取締役が負う追加情報提供義務に違反する場合、株主や出資者の権利や利益に重大かつ直接的な影響を及ぼすような場合には、株主総会やその決議の無効の根拠となり得ると結論づけることができる。

要約すると、最高裁判所が要求する均衡性は、以下に挙げる点を中心に展開する。

a) 資本会社法第180条違反による主な結果は、同法第236条に定める取締役の潜在的責任であるべきである。

b) 原則として、資本会社法第180条違反は、株主総会またはそこで採択された決議の無効を意味しない。

c) 上記原則に対する例外の決定には、以下の観点をより分析する必要がある。

– 例外は、制限的性質を有す。

– 審議中の案件は、議案に関する特定書類に株主がアクセスできることを必然的に必要としなければならない。

-ある株主、出資者が、情報を得る権利の充足がないことを理由に、決議に対する潜在的な異議申立てを目的として、株主総会において何らかの抗議を表明したかどうか。

– 株主総会開催前の情報を得る権の行使への対応として会社から提供された情報は、不正確または不十分であったとしても、会社決議に対する異議申立ての有効な理由とはならない。しかしながら、その不正確性、もしくは情報の不在が、議決権またはその他の参加権の合理的な行使に不可欠であった場合は例外とする(資本会社法第204条第3項(b))。

-取締役の欠席が、株主または出資者の有する権利への侵害に関連する場合、法的妥当性原則への配慮。

– 取締役欠席原因との均衡性。場合によっては、会社内の平和及び利益のために正当化されることもある。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2024年1月12日