税務違反と株主-取締役責任

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導入部

株主と取締役の責任領域は、必ずしも明確ではないが、特に一人の人物が両方の役割を担う場合はこれが顕著となる。責任の境界線はしばし不明瞭であり、ある特定行為は、会社の意思表明として会社に帰属すべきか、逆に、会社経営職務遂行の一環として取締役に帰属すべきかについて疑問が生じる。

直近、2025年7月9日付スペイン最高裁判所判決(EU案件番号ECLI:ES:TS:2025:3406号)では、当該問題が分析対象となり、とりわけ、会社経営機関の過失による税務違反の場合に、株主-取締役という二重の地位を有する者に対する責任追及の可能性について重要な判断を示した。

  1. 訴訟背景と事実関係

あるスペイン有限責任会社(以下「本件会社」という)は、税務調査の結果、第三者間の契約における不正行為、および重大な会計不正が発見されたため、スペイン国税庁(Agencia Tributaria、以下、「AEAT」という)から制裁処分を受けることとなった。

当該税務調査の結果、AEATは本件会社に284,499.42ユーロの追徴課税の決定を下した。うち約98,000ユーロは、本件会社に対する制裁金であった。

第1審

本件会社は会社責任に基づき、違反行為発生時に会社経営陣であった二人の取締役(以下「本件共同被告」という)に対して訴訟を提起し、被った損害の全額の賠償請求を行なった。

第一審裁判所は当該請求を認め、共同被告に対し、AEATの当社への支払い請求額である284,499.42ユーロ全額の連帯支払いを命じた。

控訴審

取締役の一人は第一審判決を不服とし高等裁判所に控訴し、同裁判所は第一審判決を破棄した。高等裁判所は、(2018年1月12日付の)最高裁判所判例を根拠として、本件共同被告は二人とも株主かつ取締役の両方の地位にあったことから、その行為は取締役としての地位ではなく、本件会社に帰属すべきであると結論付けた。

上告審

本件会社は、本件共同被告が取締役としての職務執行上の過失行為の結果として発生した問題であるとして、本件共同被告らに帰責可能であると主張し、上告を提起した。

最高裁判所民事部法廷は上告理由を認め、高等裁判所判決を破棄し、同時に、同裁判所判決の根拠とされた2018年1月12日付最高裁判決の適用範囲を明らかにした。

株主取締役行為の性質による責任帰属の基準

最高裁判所は、特定の行為が直接会社に帰属し得るとする当該法理は、取締役と株主が同一人物である場合は、特に、自動的に適用するべきでなく、裁判の背景及び損害の原因となった行為の性質を考慮すべきであると明示した。

具体的には、損害の起因行為が、株主総会もしくは株主自身の決定に基づく場合にのみ、適用は適切であるとした。一方、例え取締役が同時に株主の地位を有していたとしても、契約締結あるいは会計処理等、経営機関に帰属する通常の経理管理業務行為に損害が起因する場合、その責任は、直接的に取締役に帰属するとした

ここで分析する案件においてAEATが罰金を課した税務違反は、契約および会計における故意・過失行為に起因し、これらは取締役としての職務に固有の行為であった。結果として、株主と取締役が同一人物であったという事実のみをもって、責任を会社に転嫁することはできないと結論づけた。

損害領域の設定

同様に、本最高裁判所判決においては、取締役責任を認めはしたが、税務当局が本件会社に対して請求した284,499.42ユーロの全額にまで責任を拡大して認めなかった点も注目に値する。

スペイン資本会社法第236条に定める会社行為にかかる責任に関しては、裁判所は次の2つの概念を明確に区別している:

(i) 主たる納税義務

本件会社の経済活動および納税義務に直接起因する、本件会社の債務金額に相当する。

税金滞納それ自体は、取締役に帰責される賠償を必要とする損害を構成しない。なぜなら、それは会社経営機関の不法行為からではなく、単に法人の納税義務から生じるものだからである。

(ii) 租税における制裁

AEATが課した制裁金は、会社経営機関に帰属する故意もしくは重大な過失による行為に起因するものであり、本件会社に直接的な損害を与えるものであるため、取締役はこの金額を賠償しなければならない。

したがって、当該事案における取締役責任は、AEATの請求総額284,499.42ユーロではなく、約98,000ユーロの制裁金額に限定される。

結論として、会社経営機関における職務遂行時の行為が損害の起因である場合、株主の地位は取締役責任に対する盾として機能しないという見解を本判決は支持し、税務違反に関する会社責任にかかる賠償額の算定基準を明確に示すこととなった。

 

 

フリオ・ゴンサレス (Julio González)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2025年11月7日

2025-11-07T14:09:28+00:0007/11/2025|カテゴリーなし, 会社法, 税務|

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