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株主らが、株主総会議事録の公正証書化を請求する権利を行使(スペイン資本会社第203条規定)することは、特にこれらが少数株主である場合、もしくは株主間紛争が存在する総会の場合に、株主の権利保護のための効果的なメカニズムである。当該特権の行使には、株主は、公証人による議事録作成を希望する旨を会社の経営機関に通知し、経営機関は公証人に作成を嘱託する必要がある。本件についての株主による通知方法は、電子メールまたはその他の手段で実行可能(ただし、スペインの内容証明郵便Burofax等、通知受領を確実に確認できる手段の選択が推奨される)で、いかなる形式的要件も存在しない。

追記として、株主は、商業登記所に対して、抑止的注記として、公証人が総会に立会いの元で議事録を作成する事実実験公正証書作成申請をしている旨を登記簿に記載請求できる権利も有す。(商業登記所規則第104条規定)ことも記す。本抑止的注記を実施することは、株主総会において採択された決議のうち、公正証書化された決議だけが登記所に登記されることを意味する。抑止的注記は、経営機関への公正証書作成申請通知が必ず公証役場を通じて送付され、取締役らがその申請の存在を認識できたことを要求する。

後者の観点は、少数株主が、株主総会の事実実験議事録公正証書作成申請をした事実を、商業登記簿に注記記載申請したことの適切性が検討された2024年10月17日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)の決定において確認された。特記すべき関連事実は以下となる。

  • 本件株主は、株主総会の招集通知を受領後、法定期限内(この場合は、株主総会開催予定日の5日前)に、居住地のVigo市の公証人役場に出頭し、株式資本の25%(公正証書請求のための持分割合最低限度はLimitadaという有限責任会社では5%、Sociedad Anónimaという公開有限責任会社では1%)を所有する株主が宣誓証書を作成し、その中で公証人に対し株主総会参加を要請した。本目的のため、株主は公証人に、本店所在地O Porriño市内の別の公証人を経由して、事実実験議事録公正証書作成申請を会社に送付するよう依頼した。
  • 株主総会開催日とされた日に、総会はVigoの公証人不参加のまま開催された。
  • Vigoの公証人は、その後、O Porriñoの公証人に対し、申請書の通知送付を確認したが、O Porriñoの公証人からの返答はなかった。そのため、会社の通知受領を確認できる記録は存在しなかった。
  •  本件株主は、事実実験議事録公正証書作成申請にかかる抑止的注記の登記を申請したが、商業登記所は、「法定期間内に、会社取締役に対し公証人文書が、正式に送付・受領された記録が存在しない」という理由で登記を拒否した。

上記を鑑み、公文書管理局は、本件株主は適切に行動しており、より勤勉(デリジェンス)に行動することを求めることはできないが、商業登記所規則第104条第1項、および第194条の定めるところにより、取締役への公証人通知による申請は実施されなかったことは事実であると結論づけた。そして、デリジェンスに行動をしなかった者の責任は別として、今回の抑止的注記の登記はできないと判断した。

その上で公文書局は、商業登記所規則第104条第2項に定める登記簿の一時閉鎖を実施しなくとも、公正証書に記録されていない会社決議は自動的に無効扱いとなるため、議事録公正証書作成を申請中であることの抑止的注記は株主権利を保護するために不可欠な手段ではないことに言及した

 

 

ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)

ヴィラ法律事務所

 

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2024年2月7日