経済協力開発機構(OECD)の勧告に従いスペインは、 2015年勅令第634号法人税規則を定めた2014年勅令法第27号法人税法に 、他の経済的データとともに税務当局への納税法人税に関する「国別」報告書の提出義務を追加した。
両規定によれば、2016年1月1日以降、以下に当てはまる企業は上記報告義務を有する。
A) スペインに住所を有する多国籍企業のうち以下の二つの条件を満たす場合
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- 前会計年度で売上高が750百万ユーロを超えている場合
- 企業グループが市場支配的地位を有する場合
B) 自動的情報交換に関する租税協定が締結されていない地域に住所を有する子会社を持つ場合
上記義務と関連してスペインは2016年1月、税源侵食、過度な節税計画及び人為的企業利益移転に対抗するBEPS計画を定める税務当局間の多国間協定に署名した。同協定への署名により、署名国の税務当局は、協定が既に発効している国の税務当局及び国際的な企業グループが存在する国の全ての税務当局に「国別」報告書を速やかに送付することを約束することとなる。
同協定により2017年9月以降、政府間情報共有システムが有効になり情報交換が自動化される、と定められているため、当局間の自動的情報交換は既に開始されているはずである。
同協定は以下を規定する。
- 情報交換の期間と方法。各国当局は多国籍グループ企業の会計年度の最終日から15ヶ月以内に報告書を交換しなければならない(初年度は例外的期間として18ヶ月とする)
- 他国当局の報告書に過誤を見つけた場合の伝達及び是正措置の方法。
- 機密保持義務、データ保護および情報の適切な使用。
- 各国関係当局間の協議手続方法。
2017年7月6日現在EU主要加盟各国、中国、ロシア、及び日本などを含む65カ国が既に当該協定に署名し、更に多くの新規国が署名予定にある。当該協定の適切な運用のために、各国は以下のうちどの方法をとりたいかの意思を伝える必要がある。
- 非相互司法共助(国当局は国内の多国籍企業からの情報を報告するが、他国からの情報は受けない)あるいは、相互司法共助(国当局は多国籍企業からの情報を報告し、かつ他国からの情報も受ける)のどちらを希望するのか。
- 当該協定をすべての署名国との間に適用するのか 、あるいは特定の国とのみ情報交換を希望するのか。
国際社会は、不正行為や国際的な税制の多様性を利用した過度な節税計画を伴うビジネス慣行を回避する必要性を認識している。
当該協定の適用開始は、多国籍企業グループによる脱税撲滅のための大きな一歩であり、署名国間の租税情報の交換を簡素化することで、脱税の発覚をも簡素化するであろう。 今後多国籍企業グループは、納税義務履行に大きな注意を払わなければならないであろう。
ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)
ヴィラ法律事務所
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2017年10月6日