スペイン企業は、国際的に見ても、再生可能エネルギー事業に強みを有し、実際、日本には、多くのスペインの再生可能エネルギー事業を行う企業が進出している。
しかし、スペインを含む多くの外国企業の再生可能エネルギー事業者が日本に進出した時代と比べ、環境が変化してきている。
そのため、近時の日本の再生可能エネルギー事業を巡る環境、とりわけ、①倒産等に関する状況、及び②太陽光パネルの廃棄及びリサイクルの義務化について、取り上げる。
I. 再生可能エネルギー発電事業者の倒産等
労働日本最大手の企業信用調査会社である帝国データバンクは、2025年5月6日、2024年度の再エネ発電事業者の倒産や休廃業等の動向に関するレポートを発表した。
太陽光発電や木質バイオマス発電などの再生可能エネルギー発電事業者の負債1000万円以上の法的整理(倒産)が8件に達し、4件であった2023年度から倍増したと報告している。休廃業・解散(廃業)の44件を合わせると過去最多の52件が市場から消滅したという。
2020年度以降の5年間で倒産した発電事業者は19件であり、その事業内容は、太陽光発電が7件と最も多く、続いて木質バイオマス発電が4件、天然ガスを含む火力発電が3件、風力発電が2件であった。
再エネ発電事業者の倒産の背景には、発電設備などの投資に対して、維持管理コストや燃料価格が上がったこと、電気の買取価格を保証する制度の水準が引き下げられたことなどがあるという。
上記のような状況にあることを鑑みると、日本での再生可能エネルギー事業を進めていくにあたり、破産・撤退を検討する場合には、日本で認められる清算、破産手続と親会社に与える影響の十分な検討などの撤退戦略の立案が重要となる。
他方、上記のような事業者と取引を行う事業者にとっても、リスクマネジメントが重要となる。どのような担保権を行使できるか、また、所有権留保などができるかなど契約書の内容を十分に確認の上、適時の債権回収を行うことが求められる。
II. 太陽光パネルのリサイクル及び廃棄義務化の法案
日本では、2000年代に太陽光発電が急速に普及した。一般的な太陽光パネルの寿命は25年から30年と言われており、2030年代に大量の太陽光パネルが寿命を迎える。
このような背景のもと、ここ数年、太陽光パネルをリサイクル・廃棄の義務化の議論がはじまっていた。2024年12月、環境省は、太陽光パネルのリサイクル・廃棄の義務化の素案を公表した。この案によると、太陽光パネルの製造業者と輸入業者に再資源化費用の納付を義務付け、発電事業者にも太陽光発電設備の使用前に解体費用の納付を義務付けていた。
しかし、2025年5月13日、環境省と経済産業省は、当該法案の国会への提出を見送る方針を明らかにした。既設のパネルの製造者に費用負担を求めるのが難しいことがその理由にあるという。
太陽光パネルのリサイクル・廃棄の義務化について、現時点での法案の国会への提出は見送られたものの、懸念点を修正の上、改めて国会への提出が目指されることになる。
上記Iで見たように再生可能エネルギー事業者は経済的に困難な局面にあるが、将来的な更なる負担が求められる可能性がある。
南智士 (Satoshi Minami)
ヴィラ法律事務所
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2025年6月27日