2022年7月29日スペイン法人SNAP SHOP 24H, S.L.(以下「本件会社」)の2021年度の年次計算書類がアリカンテ商業登記所)に提出された。

電子的手段で署名・提出された株主総会議事録証明書には、決算承認に関する決議と利益分配に関する決議が含まれていた。利益分配に関する決議については、「以下の条件で利益を分配する」という文言が記載されているのみで、分配に関する詳細な説明はなかった。

アリカンテ商業登記所は、問題となっている証明書につき以下の法的根拠を示し、登記を拒否した。

(i) 提出された株主総会議事録証明書に、スペイン商業登記規則第366条第1項第2号に定めるところによる、利益分配についての記載も、事業活動なしとの記載もない。

(ii) 商業登記規則第109条に基づく、当該証明書に署名をする権利を有する者のデジタル署名を検証することが不可能であった。結果として、デジタル署名者と、証明書に署名する権利を有する正当な人物との間に明確な関連性を確立することが不可能であった。

(iii) 本件会社は、証明書への署名およびその電子的提出について、部分的修正ではなく、包括的な修正を行うことを要求された。

当該登記拒否判断に対し、本件会社は、アリカンテ商業登記所の示した各法的根拠に、以下の異議申立てを主張した。

– 第一に、株主総会決議には、デジタル署名者によって署名されたバランスシートに記載のある利益分配に言及することを規定していた。

– アリカンテ商業登記所の示した第二の法的根拠に対して、本件会社は、総会決議だけでなく、証明書や決算書の提出書にも同様の電子署名があり、この署名者が本件会社の取締役の一人である場合、商業登記規則第109条の規定に従い、署名者とその権利者の間で対応を確立することが可能であると主張した。

– 最後に、本件会社は、商業登記規則第42条1項、第42条4項および10項に基づき、決議の包括的な登記拒否ではなく、部分的な登記が実施されるべきだった、と主張した。

商業登記官は、当該異議申立てに対しても登記拒否判断を維持した。その結果、当該問題をスペイン公文書管理局に付託し、同局は以下の法的根拠に基づいて本件会社が提出した上訴を解決した。

一方で、年次計算書類に関する株主総会決議が採択された証明書には、いかなる場合でも、(i) 年次計算書類の承認、(ii)利益配分、場合によっては連結会計を含めなければならず、公証人の前で認証された署名とともに提出しなければならないことが確認された。その結果、対応する利益分配に関する詳細が盛り込まれた会社の決議証明書がないことにより、スペイン公文書管理局はアリカンテ商業登記所によってすでに判断された書類の欠陥を確認した。

法的根拠の第二ポイントについては、証明書のデジタル署名者と署名する権利を有する者との間に関連性がないことは、本件会社が採択した決議の証明書に含まれるすべての署名を検証することができない場合にのみ実現するとした。これは、1999年12月30日付の省令及び2009年1月28日付の省令第2条に基づくスペイン公文書管理局の説明であった。したがって、電子的に提出された本件の総会議事録証明書の電子署名を検証することは不可能であり、署名者と署名権者の関係を確立することは不可能であった。

2023124日付の判断にて、スペイン公文書管理局は本件会社の上訴を棄却し、登記官の決定を支持した。

 

 

マルティネス・コスタ・ディエゴ (Diego Martínez-Costa)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年3月3日