スペイン資本会社法第217条は、取締役職を無償とすることを定めるが、会社定款に有償であることを認める規定がある場合には、報酬を払うことも認めている。
報酬を支払う場合、定款上に報酬制度又は報酬を構成する項目が記載されている必要がある。加えて、全取締役の年間報酬額上限設定は、株主総会が担う。
取締役職が無償である場合(会社の定款に当該事項についての言及、明示がないことが理由である場合)で、同時に、定款自体が、取締役職に呼応する職務以外の、例えば上級管理職の場合のように労働サービス提供の結果として、取締役への報酬支払いの可能性を確立している場合に、その対応に疑問が生じる。
法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)は2023年5月10日付決定にて、会社が定款において、一方で取締役の職務が無償であること、他方で、取締役が会社のために雇用的な性質を有す従属的業務を実行する可能性があることを定めている条項が存在する場合、合法であるか、そして当該条項は商業登記所に登記可能であるかについての判断を明確にした。ここで取り扱った案件では、事実関係として、ある新設会社の定款では、取締役の無償性が規定されていたが、同時に会社と取締役間に民事関係又は労働関係を有する可能性も認めていた、という背景がある。
商業登記所の登記官は、該当定款条項の登記を拒否した。それは、取締役がその職務遂行のために会社と有する関係以外の契約の結果として、取締役という役職に呼応する活動以外の職務の遂行が、関係性及び報酬の蓄積条件であると理解したためである。登記官は、ここで存在しうる雇用関係は、取締役としての業務提供という関係性に包含され、二元性は成立しないと考えた。そして、当該定款においては、上級管理職雇用契約締結の可能性を明示的に除外すべきである、とした。
公文書管理局は、本件登記官の解釈を否定し、以下の理由を挙げた。第一に、定款に取締役の報酬の有無に関する規定が存在しない場合に、いかなる民事契約又は雇用契約を締結することにより、取締役としての業務遂行に対する報酬を支払うような偽装は、違法であることを確認した。取締役としての報酬と、取締役ポストと無関係な業務遂行に対する報酬の支払いという両立し得ない二つのケースは、これを分離して考慮する必要があると考えた。しかし、当該前提は、取締役が無償であるとしても、これに加えて同取締役と会社の間で、取締役本来の業務である会社経営と代表職といった以外の業務提供を行うために、これをカバーする民事又は雇用契約の締結の可能性を定款に定めることを妨げないと考えた。これらの契約は、株主総会の承認を得る必要がある。(スペイン資本会社法第220条規定)。当該定款規定は、原則として、取締役の「定款外報酬」であると解釈すべきではなく、報酬に関する定款上の定めが不確定であること、もしくは定款から、取締役の職務執行に対する有償性を推察できることが必要であるとした。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2023年5月5日